GMO

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GMO(上)服部真澄 著 上下巻 新潮社 2003年7月30日

遺伝子組み換え作物をキーにした長編小説。最後まで筋が読めず、全2巻600ページがあっという間の一級のエンターテイメントに仕上がっています。…


お豆腐製品に「遺伝子組み換え大豆を使っていません」等という表記をみたことがありませんか。その遺伝子組み換え作物、つまり、Genetically Modified Organismsを短くしてGMO。これがこの小説のタイトルです。

余談ですが、お豆腐の大豆の場合、「使っていません」というのは「5%まではGMO大豆を入れている可能性がある」という意味と同じです。ご存じでしたか? 大豆はまだいいほうで、表示義務のないジャガイモなどまで考えると、私たちは既にGMOをクチに入れていると思って間違いありません。これらを避けるには、信頼のおける国内生産者のものを選び、国内生産者とともに生きていく道を捜していく必要がありますが、詳しくは、たとえば安田節子さんのHPをご覧下さい。

この本は、その厄介なGMOを話題の中心に据えています。登場人物・機関は実に多彩で、国際的食品産業やCIAをはじめ、科学ジャーナリスト、ワイン醸造家にワインジャーナリスト、コカイン密輸組織に南米の政治家などとなっています。それが見事に絡まりあって、予想のつかない展開となるのですが、その筋を説明するのは、これから読む人の楽しみを奪うので触れません。

ただ、1つだけ。天候や病害虫にやられない農作物を開発するのが何が悪いのか、なんて思っている人がいるとしたら、是非この本を読んで、なぜアカンのか理解していただきたい。遺伝子操作で2世代目の種ができないようにいじり、農作物を農業者の手から資本家が収奪するのは簡単なもので、それがGMOを操る巨大食品産業の狙いであることは明らかです。要するに、GMOとは新手の資本主義的な(姑息な)手段なのです。それも取り返しのつかない影響が出てくるかもしれないのに、多くの人がそのコワサを軽視しているのがなおコワイ。GMOという新しい話題を使いながら、この本で示しているのは私たちの「暗い未来」なのかもしれませんが、小説ではそんな堅苦しいことは抜きで楽しめます。

難点をいえば、小説後半で登場するある某GM作物の説明が皮相的だったこと。残念。でも、そのことで小説の面白みを減ずることにはなっていません。新しい技術的な話題をとりあげた面白い小説をお探しの方にお薦めします。GMOの普及に異議あり、そんなものは食さないと思っているエコロジカルマインドの人にも、十分に読む価値があるでしょう。

骨董市で家を買う―ハットリ邸古民家新築プロジェクト服部真澄さんのお名前は、自宅作りを紹介した「骨董市で家を買う」で知りました。古民家の材料を使って同じようなタイプの家づくりをめざしている方はもとより、家づくりが自分らしさの表現だということを学ぶためにも、こちらの本もお薦めです。