2つの接吻

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夏の嵐 [DVD]6月の台風に翻弄された日本。その陰で一気に消費税増税法案の党内集約に勤しむ(公約違反の)民主党幹部。台風報道に乗じてキナ臭い動きを放置気味だった御用メディア。相変わらず、民をまやかす国であることよ!
ところで、「夏の嵐」といえばビスコンティ。あの中のラヴシーンはHeyez(アイエツ)の「接吻」に触発されたそうな。偶然ドアノーの写真を見ていて、昨年ミラノで見たその絵を思い出しました。
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Heyez(アイエツ)の「接吻」という絵は次の通り。リンクはミラノのブレラ美術館に張っています。ホンモノは足の部分まで描き込まれ、2人の全身像になっています。

今だったら何処にでもありそうな1シーンですが、1856年に最初にブレラに展示された時は話題になったそうです。さもありなんですな。ちなみに、ブレラ美術館はこの絵を門外不出にしているようなので現地に行かないと見ることができません。

一方、もう1つの接吻、ロベール・ドアノーの「接吻」は次の写真。「市役所前のキス」は、1950年にライフ誌がパリの恋人たちの写真をフランスの通信社に依頼した時のものです。

この写真は演出だそうで、その後肖像権を巡って裁判沙汰になったと本にありますが、お金が絡むとイヤですね。

ドアノーといえば、子どもが入ったパリの街角とか、著名人のポートレート、あるいはレジスタンスとかカルチェラタンの銃撃戦の写真など真摯なテーマから茶目っ気のあるものまで、しっかり視野に入れた素晴らしい写真家。ブレッソンもいいけどドアノーもね…ですよ。(余談ですが、料理評論家の平松洋子さんが最近「芸術新潮」でドアノーの解説をしていたのはびっくり。幅が広いなぁ)

さて、ドアノーの頭の中にはアイエツの「接吻」はなかったのでしょうか。誰でも思い浮かぶシーンだから、そんな先達は必要なかったのでしょうか。少なくとも私はドアノーの写真をパッと見た時、アイエツの「接吻」が頭に浮かびました。ドアノーさんに聞きたいな(って、もう1994年にお亡くなりです)。

最後に、もう一度2つを並べて見てみましょう。アイエツがブレラの看板画家として歴史に残り、一方でドアノーを商業的に有名にしたのがこの「接吻」だったことを考えると、絵とか写真の違いを超えて1つのシーンが持つ印象の大きさを考えてしまいます。