温度差

3.11

大飯原発の再稼働に際し、新聞各紙の論調がかなり違います。再稼働オーライ、いけいけドンドンの読売新聞・産経新聞はいつもながら。一方で、河北新報や北海道新聞、そして東京新聞等は批判的な視点で冷静に問題を分析しています。

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まず河北新報。解説記事のタイトルは「大飯再稼働 経済優先見えぬ反省 結論ありき「神話」復活」(6月17日)。見事に大飯原発再稼働の問題点を突いていますね。

曰く、

事故から学ぶべきは「安全神話」は虚構、つまり想定外の事故は常に起こり得るということだ。再稼働のために、新たな安全神話を生み出したのでは元も子もない。

鋭いなぁと思ったのは次の一文。

この夏の電力不足は1年以上前から想定できたはずだが、再稼働以外の道を真剣に考えたのか疑わしい。

その通りなんですよね〜。昨年夏頃には今年の状況は把握できていましたし、問題にする報道もありました。でも、政府は何ら手を打とうとしなかった。おそらく、原発再稼働が既定路線だったからでしょう。この解説、既にHPからは見ることができなくなっているのが残念(早く消しすぎだよ)

次に北海道新聞。「大飯再稼働 「安全神話」繰り返すな」(6月17日)というタイトルの社説で、

原発の安全性に対する国民の不安を置き去りにした見切り発車と言わざるを得ない。

とし、

 何よりも事故はいまだ収束しておらず、原因究明を踏まえた新たな安全基準づくりもこれからだ。安全、防災の両面で対策が途上にある段階で、安全性が確保されたと宣言する根拠は全くない。

というのは私が云っているのと同じですね。そして、

 多くの疑問に答えぬまま、「私の責任」という空疎な言葉で押し切った首相の態度は、原子力行政への信頼回復を一層困難にするだろう

と締め括っています。

最後は東京新聞。ここは一貫して原発報道をきちんと続けている例外的な新聞です。6月17日の社説タイトルは「大飯原発が再稼働へ 私たちの望む未来は」。

政府は、大飯原発3、4号機の再稼働を決めた。だが、私たちは日本の未来をあきらめない。原発に頼らない社会を目指そう。節電の夏にも挑もう。

と、最初から格調高く、私たちの今後に目を向けて大飯原発問題を論じようというわけです。流石です。単なる批判ではない証拠に、

経済の繁栄は、原発ではなく持続可能性の上に立つ。技術立国日本こそ、グリーン経済移行の先頭に躍り出るべきなのだ。

という日本の今後を見据えた提案を行い、

 原発マネーが支える暮らしは永続しない。電力への依存をお互いに改めて、この国全体の体質改善を目指したい。

と原子力マフィアとそれに寄生する国全体を叩いています。素晴らしい。この社説はネットでまだ読めるので是非一度ご覧下さい。

かくして、新聞は会社によって視座や論点も違えば、時事の解釈が全く違います。原発事故に関しては産経読売は論外、朝日毎日も御用メディア。もちろん気鋭の記者らもいるのですが、頭がダメだから紙面に出にくいのが実情でしょう。そういう意味で東京新聞は貴重です。(東京新聞は中日新聞東京本社が発行)

ついでながら、野田総理が再稼働を再起動とわざわざ言い換えているのを何度も聞くと、彼の頭の中では鳩山・菅そして小沢排除で新政党の「起動」を目指すという思いを重ねているような気がします。彼の本当の姿はドジョウなんぞではないと思いますが、オタマジャクシのように変態を果たすかも。