壊れた5つの防壁

.opinion 3.11

原子炉内核燃料の安全性を説明する時に登場する「5重の防壁」。でも、東電福島第一原発では防壁にはならず、一部は爆発して飛び散り、残りはいつ崩壊してもおかしくない状態です。おまけに使用済み核燃料は格納容器の外にある燃料プールに放置されたまま。にもかかわらず、危険がないような雰囲気づくりをしているのが国や東電とその取り巻き。ばらばらに散乱した核燃料、穴の空いた容器、ダダ漏れの放射能汚染水、外部の燃料プールの耐震性…、不安材料はいっぱい。つい最近も容器内の水位が予想外に低いという報道もありましたが、ホンマに大丈夫なのでしょうか。

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原子炉の核燃料を守る「5重の防壁」とは、

  • 第1の壁 ペレット
  • 第2の壁 燃料棒被覆管
  • 第3の壁 原子炉圧力容器
  • 第4の壁 原子炉格納容器
  • 第5の壁 原子炉建屋

のこと。

ご存じの通り、311の大地震&津波それに引き続く水素爆発などで全部壊れてしまい、(分子レベルにまで)粉々になった核燃料・核廃棄物質を、福島県をはじめ外部へ飛散させ、大勢の人々を被曝させてしまいました。

原子力安全委員会のHPに明言されている説明とは裏腹に、「万が一の時にも常に安全な状態に向かうよう設計された5重の防壁」は全く役に立ちませんでした。つまり5重の防壁は「絵に画いた餅」で、「机上の空論」であることを証明してしまったのです。

さらに厄介なのは、放置された使用済み核燃料の危険性。東電福一原発の事件では格納容器内の核燃料だけでなく、使用済み核燃料が深刻な事態を引き起こすことを明らかにしてしまいました。冷却材の水が切れて再発熱し水素爆発を起こしてしまったからです。白状すると、311前には使用済み核燃料の危険性については(私は不勉強ゆえ)知りませんでした。

使用済み核燃料には「5重の防壁」のうち、第3以下の壁はありません。また、第1第2の被覆菅やペレットは単なるケースであって、とても「壁」とは云えません。そんな剥きだし状態のものが東電の原発にはいまだにたくさん放置されているのに(先日も指摘)、放射線量が強すぎて近寄れないため抜本的な対策ができないまま。これで果たしてもう事件は収束したといえるのかどうか。

水をかければ冷却できるって? そりゃそうだ。でも、穴の空いた格納容器からは放射能汚染水がダダ漏れで、うまくいっているはずの水位は予想外に低いのはなぜ? 使用済み核燃料については保管用する燃料プールが次の大地震で壊れたらどうなるの? プールの外壁は充分な耐震性があるのでしょうか? 絶対穴が空かない底を持っているのでしょうか。私はとっても気になります。

国や電力会社が原発の危険を安全と云っていたのは3.11以前からですが、現在国がいう事故の収束とは終息していないことのゴマカシであることを私たちは知っておかねばなりません。次のデキゴトの影響範囲がごくごく近隣だけなのか、50kmなのか100kmなのか、もっと遠くまで及ぶのか、そこまでは私にはわかりませんが、非常に危険であることには何ら変わりありません。避難区域の解除や住民の呼び戻しが最悪の事態を覚悟の上なら納得ですが、そうじゃないなら関係者は現状認識から始めて欲しいものです。

下記は東京新聞にある東電福一原子炉の各号機の現状です(2012年5月19日現在)。

(追記)5/26に細野原発相が一部メディアを引き連れて4号炉を見学したそうな。使用済み燃料プールが水平を保ち、下部を耐震補強していることを東電から説明を受け、安全性を確認したとのこと。ビニールシートで覆わされているだけの剥きだし核燃料を前にして笑止千万! そんな話、建物全体が崩壊したら何の意味もない話だとなぜ指摘できないのか、それとも東電の言いなりで御用メディアの存在を如何なく発揮しようとしているのか。どちらにしても「被曝を強制される側」の話ではありません。