この国は壊れている その6

.opinion 3.11

既にSave Childサイト等々いろいろな処で触れられていますが、私も忘れずに書いておくことにします。原発事故で撒き散らかされた放射性物質を「無主物」だとした東電と、その言い分をそのまま認めたかのような裁判所の話です。(お詫び)当初、無主物を「無生物」と表記していました。申し訳ありませんでした。ご指摘下さったSさんに感謝。

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話は経緯は以下の通り。

2011年8月8日、福島県二本松市のゴルフ場「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」が東電福一原発事故による放射性物質で汚染され営業ができなくなったとして、除染とそれが終わるまでの維持管理費の支払いを求めて東京地裁に申し立てを行いました。

これに対し東京電力曰く「原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない」、だから「除染に責任をもたない」とし、放射性物質を「もともと無主物であったと考えるのが実態に即している」と応えました。無主物とは何なのか、よくわかりませんが、誰のものでもないという意味のようです。(朝日新聞 プロメテウスの罠 2011/11/24)

東京地裁はどう判断したか。汚染されたことは認めましたが「営業に支障はない」と判断し、10月31日付で訴えを却下。賠償請求も退けました。判断根拠は文科省が通知した「子どもの屋外活動制限である毎時3.8マイクロシーベルトを下回る」というもの。ちなみに本裁判長の名前は福島正幸(敬称略)。

東電の言い分は滅茶苦茶。無主物の理屈がオッケイなら、煙突から出る排ガスなども責任なしということに成りかねません。しかし、その屁理屈に裁判所が同調するのはなぜなのか? あまりにも異様です。

さて、ここまでは既にいろいろなサイトで紹介され、批判されてきました。でも、この出来事を読むためにはもう1つ重要な事実を知っておかねばなりません。それは裁判所と原発業界とのオゾマシイ関係です。

官僚の天下りはよく知られていますが、実は裁判官も企業や経済団体などに天下っています。裁判官の経験や知識を民間企業などが活かすというのは聞こえが良くても、天下り先が利害関係のある会社や組織だとしたら、はたしてその再就職が妥当かどうか。裁判所の判断にも大きな影響を与えてしまうのではないかと不安に感じるのが普通でしょう。

たとえば、

味村 治(元最高裁判事、東京高検検事、内閣法制局長官) > 東芝社外監査役
野崎幸雄(元名古屋高裁判事 仙台高裁長官)       > 北海道電力社外監査役
清水 湛(東京高検検事、法務省民事局長、広島高裁長官他)> 東芝社外取締役
小杉丈夫(大阪地裁判事補ほか)             > 東芝社外取締役
筧 榮一(東京高検検事長、検事総長)          > 東芝社外監査役・取締役
村山弘義(東京高検検事長)               > 三菱電機社外監査役・取締役
田代有嗣(東京高検検事)                > 三菱電機社外監査役
土肥孝治(検事総長 法制審議会委員)          > 関西電力社外監査役

等々の天下りはどうなのか(敬称略 出典は、三宅勝久・週刊金曜日 2011年10月7日号)。

とくに一番目の味村某は四国の伊方原発訴訟で、杜撰な立地審査しかやらなかった国に違法性なしと判決を下した張本人。その人物が原発企業である東芝の重役に天下るのって誰が考えてもおかしい。裁判官の黒い服って、自らのマックロをシンボライズしたものだったんでしょうか。

つまり、今回のゴルフ場の裁判は裁判所という機関が「被曝を強制する側」であることを顕わにしたということであり、その背後には裁判所と原発企業や電力会社との深い援交関係があることが考えられます。

この国の原発推進に関しては裁判所もグル。それが原発の安全性に対する判断を歪め、無謀な原発推進に繋がっていき、311を招来させてしまったのではないか。今回の裁判も裁判所は未来の雇い主との良好な関係を保っただけかもしれません。せめて裁判くらいは清廉潔白であって欲しいと思うのですが、それさえ適わないほどこの国は壊れているのでしょう。ブーシット!