原発事故の恐怖

.Books&DVD… 3.11

完全シミュレーション 原発事故の恐怖 (風媒社ブックレット)今回の東電・福島第一原発の事故について、政府や東電は「想定外」だったと説明しています。でも、それはゴマカシ。なぜなら、このような事故が起こりうると考え、警鐘を鳴らしてきた人々の話を無視し続けてきたからです。その警鐘者の1人、瀬尾健さんの遺作をブックレット化したのが「原発事故の恐怖」(風媒社 2000)。この本の「想定」のすさまじさは今から読んでも遅くはありません。(追記)amazonは在庫切れのようなのでbk1へのリンクをつけています。

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瀬尾健さんは、京都大学原子炉実験所助手(今の助教)で核物理学、原子炉事故の災害評価などを専門としていた研究者。1994年にガンで逝去されましたが、その遺作をまとめたのが「原発事故・・・・その時、あなたは!」です。この本をブックレットという形にしたのが「原発事故の恐怖」。今から11年前の2000年に出版された本ですが、今も買えますし、今だからこそ理解しやすくなった本ともいえます。

まず、シミュレーション編。日本にある原子力発電所で大事故が起こった場合、それぞれの原発の周辺でどれくらいの急性死亡者が出る見込みか、どの程度の範囲の人が避難を余儀なくされるか、どの程度の人が将来ガン死するか、を図で示したもの。原発を造らなかった沖縄県を除き、日本のほぼすべての地域が関係する図になっています。「我が家の近くには原発がないから、大事故が起こっても被害は受けない」と思っていた方々は、愕然とするでしょう。

次のCASE STUDY編。ソ連のチェルノブイリ原発事故を検証したものですが、福島第一原発事故が起こった今、チェルノブイリ事故はソ連だから起こった等と言っていた日本が恥ずかしい。むしろ事故の共通点の方が多いことがこの本からも明らかで、読み応えのある内容となっています。

そして、防災編。原発で大事故が起こった場合、私たちはどのように対処できるかを示したもの。というか、対処方法を真剣に考えれば考える程、本当に大事故が起こった場合は対処できない範囲が大きいことが判ります。本当に防災を考えれば、原発を止めるしかないという著者の考えが妥当であることに納得できるでしょう。

最後にあとがき。これは、小出裕章氏(京大原子炉実験所)が2000年当時に書かれたものですが、原発の病根を見事に読み解いています。今読んでも古さが全く感じられません。それはすなわち原発事故に対する当局や電力会社の対応が改善されてこなかった証拠です。

今回の事故でも明らかなように甚大な原発事故は起こりますし、起きてしまえばヒトやマチやシャカイは存亡の危機に瀕します。瀬尾、小出両氏らが繰り返してきた「原発事故に防災はあり得ない。だから原発はやめよう」という主張が再認識できるでしょう。内容は深い本ですが、ざっと読むこともできるように工夫されています。あなた自身やあなたの家族のために是非一度お読みになることをお薦めします。