みどりさんの40周年 

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五嶋みどりさんの40周年公演の演奏を聴くため先週土曜日は大阪へ。日本センチュリー交響楽団が前半を演じ、後半はその楽団をバックにして、みどりさんのチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.35」。この曲は本サイトでも既に紹介済みの、あの曲で、みどりさんの演奏は魂を揺さぶられる素晴らしさでした。事前にプログラムを見ていなかったので余計に感激の午後でした。

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みどりさんの演奏について、誰かと比較してどちらが上手かとか言う人がいます。これは比較自体が変。だって、鑑賞者の好みを排除した上で、一定レヴェルの人たちの演奏を比べるのはきわめて難しいから。だいいち、類い稀な才能を持つ人たちに失礼です。

たとえばモーツェルトやベートーベンのどちらが優れているか、絵描きでいえばモネとピカソのどちらが上かというような問いはそもそも愚問だ、と云えば了解していただけるでしょうか。

優れた作家や演奏家に優劣・上下をつける等という発想は、そうしないと商売が成り立たない人たちに任せ、先の「いい絵」同様、私たちは自分の感性・感覚・好き嫌いを大事にするのが肝心です。

さて、みどりさんの演奏ですが、今回も超素晴らしい。うまく表現できませんが、超絶技巧の演奏であることさえ意識の外に飛んでしまう程、曲そのものが迫ってきます。多くの演奏家の場合、速いフレーズが正確だとか、ロングトーンがイイとか技巧的なことが気になるのですが、みどりさんの場合はそれを超越しています。少なくとも私はそのまま曲にのめり込むことができます。


当日の演奏前の記念対談でみどりさんは「アイザック・スターンからいつも演奏前に、作曲家の気持ちになって演奏せよと教えられた」と披瀝されましたので、なるほどなぁと納得した次第です。

今回の公演では来場者に40周年記念の『道程』という冊子を無料で配っていました(全国の公演でも今シーズンは配布しているらしい)。この本の最初に20周年記念誌のことが出ていました。その本、うちにあります。

というのも、私たち夫婦が最初にみどりさんの素晴らしい生演奏を聴いたのがちょうど20年前。場所も今回と同じくザ・シンフォニーホール(大阪)で、当時買い求めたのがその本でした。あの時の一曲目は、ヴァルス・カプリース第6番(リスト/オイストラフ編/シューベルトのピアノ曲より編曲:「ウィーンの夜会」S427より)。この曲があまりにも素晴らしく、夫婦ともに拍手をしながら涙を流したのを思い出します。

あれから20年。みどりさんの20年と40年、両方とも聴けたのは嬉しい限り。こちら20年前は地元のゴタゴタで多忙な毎日。その後、心筋梗塞一歩手前の狭心症。さらに血糖値のコントロールに問題があることが分かり、糖質制限を始めて既に10年。月日の経つのはホンマに早い。みどりさんの演奏を聴きながらそんなことも考えてしまいました。

(CDのMidori 20th Anniversaryを聴きつつ記述。このアルバムはApple Musicにはなし?)


(追記)
日本センチュリー交響楽団はもともと大阪府運営の交響楽団。橋下大阪府知事(元)の時代に補助金を打ち切られ、公益財団に改組し現在の名称に。コロナ禍で音楽会が消失したことなどで財政が苦しいのかHPの更新も一部滞っているようで、今回の演奏会の案内も載っていません(Twitterのみ紹介あり)。大丈夫か? センチュリー!