This time is different

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This Time Is Different: Eight Centuries of Financial Folly「今回は違う」、よく聞く言い訳の文句。
米国でITバブルが起きた10数年前、「米国は日本とは異なり、経済も政治もしっかりしているからバブルではない。今回は違うんだ」。その後の米国住宅バブルの時も「不動産価格の上昇はバブルではない。今回は違う」。サブプライムローンなる国際的詐欺が発覚した時には、「問題はたいしたことはない、今回は恐慌的ではない」と云っていた経済学者や評論家が山ほどいた。それら厚顔な連中が今でもウヨウヨしているのは別としても、その「今回は違う」というセリフが私たちを如何に欺き、そして誰を助けたのか? 
昨年上梓されたラインハートさんとロゴフさんの渾身の著作は過去数百年のデータを駆使し、先のダマシ言葉に真っ向から挑戦。いずれ翻訳されるだろうけど待ちきれないのでゲット。とりあえず、長い序文と結論章だけは読みましたが、やっぱりだなぁ。

Carmen M. Reinhart & Kenneth S. Rogoff , “THIS TIME IS DIFFERENT Eight Centuries of Financial Folly ” Princeton 2009

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ロゴフさんといえば、チェスの天才少年でした。その彼がいつのまにかIMFでエコノミスト、現在はハーバードの教授。昨年末ダイヤモンド誌にこの本が紹介されていたので年明けに注文。届いたのは460ページで915グラムのハードカバー、重いゾ。付録データが140ページもあり、別に序文が11ページという代物でした。

著者らは66カ国・8世紀に渡るデータを駆使して、政府債務不履行と銀行恐慌について詳細に検討を加え、「今回は違う」というセリフが如何に儚いものかを明らかにしています。曰く、過去世界経済は何度となく金融危機に見舞われてきたが、多くの場合、危機発生の2~3年後あたりからソブリンデフォルトの波が押し寄せてきたとのこと。昨今のギリシアや東欧の状況はその前哨なのかもしれませんね。

煎じ詰めれば、著者らのメッセージは実にシンプルで、

We have been here before

というもの。♪アカシヤの花が咲いていた〜♪というようなものでしょうか(わかる?)

政策立案者や投資家は「今回は違う」という前に、この本で示した証拠の重みを受け取って欲しいというのが著者らの願いだと序文の最後にありました。

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ロゴフさんがチェスの名手だという話をしていたら、連れ合い曰く「その人、チェスが本業なの?それとも経済学者?」との質問。ああ、そうか、彼の先読み能力はチェス由来で、それがエコノミーの分野で縦横無尽に発揮されているのだなぁと思う次第。

さてさて、彼らの読みははたして当たるのかどうか? 近いうちにソブリンデフォルト…は私も当たっていると思いますが、それがいつ起こるのか。ロゴフさんは2〜3年後とのことですが、皆さんもご注意下さい。