正しく怖がる その2(第2稿)

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とうとう、いや、やっとというべきか。昨日WHOが新型コロナウイルス禍(COVID-19)をパンデミックとして認めました。世界は慌てふためき、株価はどこも大幅ダウン。こういう時だからこそ、ガセや根拠の薄い思いつき規制に惑わされず、データと科学に基づいて正しく怖がることが求められています。
ということで、あれこれ紹介しようと一昨日から準備していたら、とても洗練されたものを昨日見つけました。それを含めていろいろ興味深いのをいくつか紹介します。(追記)22時に4つ目の紹介を追加記載しました。
(追記2)イタリアが感染爆発を起こしているのは事実ですが、人工呼吸器が足らず高齢者が死んでいるというのはフェイクニユースみたい(CREA web)。

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まず、ピークアウトしたとされる中国本土の感染。その中国、余裕が出てきたのか、感染拡大が止まらないイタリアに医師や検査資材などの支援を行うという動きまで出てきました。

中国の感染状況については2月末に医学雑誌にレポートが発表され、現在の判断の基になっています。そのレポートとは、「Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China」(The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE 誌 2020年2月28日)。中国での新型コロナウイルス禍(COVID-19)を統計的にまとめたものです。なお、COVID-19の原因ウイルスの名称は SARS-CoV-2 となっています。

実はこのレポートを整理して紹介しようとしていたのですが、圧倒的に洗練されたものをネットで発見。「総説 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」と題したもので、国立国際医療研究センター国際感染症センターの忽那賢志氏がお書きになったもの。

コロナウイルスとはどういう病原体なのか、インフルエンザウイルスとどこが違うのか、感染疫学や症状、致死率等々がまとまって紹介されています。医学的な記載は読みにくいかもしれませんが、ガセ情報に惑わされないためにも是非手元にキープしておくことをお薦めします。ちなみに、この中の文献23というのが先の中国レポートです。

ここで強調したいのは、感染しても多くが軽症であること(8割以上)。もし重症になっても治療が適切なら半分くらいは回復するかもしれないということ(トム・ハンクス夫妻に幸あれ!)。

ただし、高齢者や基礎疾患がある者の致死率が高いというのは要注意。一方で、全体で3.4%という致死率は入院するような患者を母数にしており、巷の感染者や自宅安静の感染者を母数に入れるともっと低くなります(中国のレポートの中できちんと触れられています)。

かくいう私は狭心症の既往ありですから(基礎疾患あり)、体調がもう1つな時には疑心暗鬼で不安になることもまま。そういう時には改めて上記データを振り返り、過剰反応は禁物、落ち着けと言い聞かせ、毎日を過ごしている次第です。

2つ目に紹介するのは和歌山の教訓。厚労省はウイルス検査の条件として発熱4日間継続、肺炎症状等を要件としています。これでは軽症の感染者を拾えませんし、軽症者は他人に市中感染させるかもしれません。そこで、和歌山県では肺炎症状が疑われる患者についてチェックをしてきたとのこと。おかげで市中感染を未然に防ぐことができたと知事は説明しています。(私が視たテレビ動画はこちら)

厚労省の検査基準は感染被害の拡大を防ぐよりもPCR検査の受け入れ能力を重視。一方、和歌山県は感染拡大の防止を第一にしました。どちらが役に立ったのか、云うまでもないでしょう。国の諮問する感染症専門家は現政権に忖度しているし、厚労省の官僚はクルーズ船での失策・誤りを認めず、戒厳令を目論む官邸の動きに追随していますので要注意。

3つ目は感染拡大中のイタリア。感染者数が12462人、死亡者は827人(3月12日現在)。回復者・死亡者を差し引いた現在の患者数で比べると中国本土とほとんど似たような数になってきました(イタリア 10,590人、中国16,080人)。

現在イタリアではサッカーの試合がストップと聞いていたら、突然9日からミラノ・マルペンサ空港発着のアリタリア航空国内線国際線がすべて停止。在住者の国内移動も4月3日まで制限されることになりました。イタリアと国境を接する国々は封鎖まで検討しているらしい。いったいどうしたのでしょうか。

ニュースによると、患者が多すぎて重症化した人に使う人工呼吸器が足りないとのこと。医療資源が圧倒的に不足しており、60歳以上には人工呼吸器を使わないという話も出ているらしい。そんな事情が死亡者をどんどん増やしているようです。

イタリアはハグとチークの国なので接触感染が大きくなるというのも聞きます。でも、少なくとも死亡者の急激な増加は医療資源の枯渇が原因のようです。中国人観光客が多く訪れたヨーロッパの国々も感染者数がうなぎ登りで、今後が気になります。

4つ目は朗報です。クラボウが3月12日に「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査試薬」を研究用試薬として3月16日から販売する、と発表しました。IgM抗体とIgG抗体の2種類で、15分で結果が出る優れモノ。精度は90%以上とのこと。これはPCR検査より圧倒的に高い。疑わしい人に適切に検査を行うことで早期発見・早期治療に繋げると重症化率も下がると期待されます。厚労省がこの検査を保険収載する時期に注目です。

どうか皆様もご自愛下さい。