合流と分流

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今回の台風19号で洪水ハザードマップ(マップ)の重要性についての認識が広がりました。でも、マップだけでは降水や浸水被害の実態予想には辿り着けません。まずマップでは想定の総雨量が前提条件になっていますから、それを超えるようなケースではもっと深刻です。また地形の高低差は2次元のマップでは把握しづらいので、危険性が読み取りにくい等々。下水の質的問題も同じくマップからは読み取れません。

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出典は国交省京浜河川事務所。

台風19号でマンフォールから下水が溢れ、武蔵小杉駅(川崎市)付近が洪水被害に遭いました。その時、悪臭がするので浸水中に糞尿が混じっているのではないかという話が出たそうです。はたして真偽はどうだったのか。

川崎市上下水道局によると以下の通り。

「(前略)今回の台風では、多摩川が高水位となったため下水管に逆流し、川の水と雨水と汚水が噴出した。逆流した水にトイレの汚水が混じっているとしても、プールに子どもがお漏らしをした程度の薄さ。また、ネットなどで道に積もった泥がウンコなどと書かれていますが、あれの大部分は多摩川から逆流した泥です」(出典は日刊ゲンダイ 2019/10/18

下水とは雨水と、汚水つまり一般生活排水や糞便などのし尿を指します。排水方式にはこれらをいっしょに流すのを合流式、雨水だけを別にする分流式がありますが、歴史的な理由や配管敷設の問題から一部だけ合流にしたものが各地にたくさん残っています。

東京都23区内もそうだし、京都や大阪も同じ。私の学生時代には「雨の降り始めには糞便がプカプカ鴨川へ流れ出てくる」などという話を聞いたことがありますが、私はいまだ見たことなし。実際には降雨で十分薄まるため、ほとんど心配はいりません。今回の武蔵小杉もそれと同じだと当局は説明しているのです。

当局の説明はその通り。雨量が十分にあれば糞便濃度が薄まるという説明には私も納得しますが、実は問題がまだ残されています。こういった浸水被害があった場合、汚れた箇所をきれいに洗い流しておかないと厄介な問題を引き起こすから。さきほど「ほとんど心配はいりません」と云った「ほとんど」とはそういうわけ。

たとえば、水が引いて路面や建造物が乾燥してくれば厄介な残留固形物の濃度が上がり、その後の異臭や衛生面の問題が予想されます。役所などが消毒剤を撒くのはそういう配慮ですが、水がひいたらオシマイではないことを私たちも知っておかねばなりません。

被害の質的問題は洪水ハザードマップではわかりません。くれぐれも洪水ハザードマップだけを過信しないように注意して下さい。