炊いたん 2つ

.Travel & Taste

急に暑くなりましたね。お変わりございませんか。今回は食べ物の話。

関西とくに京都では煮ものを炊いたん(たいたん)と云います。煮たのか炊いたのか、いったいどっちやねんと云いたくなる名称ですが、関西特有の薄味のお出汁や煮汁を素材に含ませたもの、といえば当たらずとも遠からず。今回紹介するのはちょうど今の時期にぴったりの茄子の炊いたんとシロナと揚げの炊いたん。どちらも美山荘のこの時期の朝の定番です。

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旅館の朝食にもいろいろありますが、最近はどこもかしこも似たようなラインアップ。お豆腐に焼き魚、煮もの小鉢に、ご飯お味噌汁、お香々・・・。卵料理がついたり、変わった食材があったり、ジュースやミルクなんてのをつけるところもあります。

でも私の好みは素材重視の美味しさ。日本旅館に泊まってまで洋食風なのはちょっとご勘弁。そういう意味では先の柊屋も美山荘も文句なしの朝食でした。ということで、先日食べた京都の美山荘の美味しい炊いたんを2つ紹介しましょう。

まず、茄子の炊いたん。昨年秋には出なかったものですが、茄子は今が旬。見た目にも色艶良しで美味しそうな感じですが、味も良かった。聞けば時間をかけてじっくり揚げた茄子をお出汁で軽く煮たものとか。出汁が良いのは当然として、茄子の柔らかさに滲み込んだ美味しさが印象的でした。

この茄子の炊いたんがどれくらい美味しいか。美山荘で生まれ育った大原千鶴さんが「煮崩れがまかないに回ってくるのをいつも心待ちにしていた」とのこと(家庭画報 2018年8月号)。日頃から美食に慣れ親しんだ人のお墨付き!。ホンマにマルっ!。

次はシロナと揚げの炊いたん。見た目はなんでもない地味なものですが、これがなかなか滋味。同じ発音でも全然違いますね(苦笑)。

シロナは白菜とは違います。どちらもシロナと読めるので同じものだとずっと思ってきましたが、カタチも違うし、どうやら全く別の野菜です。お出汁に合わせるなら淡泊なシロナの方が白菜よりも合うのかもしれません。

この炊いたん、揚げはきつねうどんに乗っている揚げのように少し甘め。でもシロナには甘みが移っておらず、全体として上手いことバランスがとれた味わいになっています。あまりに美味しいので若女将さんに作り方を伺ったら、最初に揚げを煮ておき、後で湯通ししたシロナと煮合わせるとか。湯通しがミソなのかしらん。

シロナはなかなか手に入りませんが、白菜ならまだなんとか入手できますから、早速先週から拙宅でもトライ。お出汁をしっかり作れば、(料亭の完成度には及びませんが)そこそこ似たような味になることがわかりました。ラッキー。

ついでながら、先の茄子の炊いたんも何度か試作して似たようなものを作れるようになりました。大きめの茄子を揚げるのは手間ですが、小さめをカットしてから素揚げにすれば大丈夫。拙宅はそれで作っています。ちなみに生姜は擦ったものの方がうちでは好み。どちらも簡単に家庭でできますから是非どうぞ。

そういえば誰の話だったか忘れましたが、自宅で美味しいのを食べたいなら奥さんを美味しいお店に連れて行けというのがありました。こちら二人とも調理をするので、美味しいのを食べたければ2人でどこか美味しい処へ行きましょう、ということになるんでしょうか(爆)。今回も自宅で作れそうな美味なものに出会った幸運に感謝。