爆買いはいつまで?

.Books&DVD… .opinion

2月8日は旧暦1月1日。いわゆる旧正月あるいは春節になるため、中国や台湾などからの観光客がたくさん来日しているそうな。テレビや新聞では爆買い特集みたいな番組がいろいろと報じられています。
この爆買いはいつまで続くのでしょうか。それはわかりませんが、ある会社の株価に注目すると爆買いの内容は大きく変化してきていることが窺えます。

・・・

株価は未来を映す鏡だと云われてきました。ウソかホントかは別として、目敏い人やインサイダーたちが株価を上げたり下げたりするため数ヶ月先くらいは映すことができるのではないでしょうか。そういう観点から、伊勢丹三越の株価を見てみましょう。(出典はYahoo Japan)

伊勢丹1602

2012年まで900円から1000円辺りだった株価。たしかに4年位前は景気が冷え込み、デパートは閑散だったので株価の低迷は肯けます。ところが2013年に急に動き出し、2014年夏頃からさらに急上昇。政府日銀によるインフレ誘導・円安誘導による景気拡大・消費拡大という期待感から株価が動きだし、それに加えて中国系観光客による爆買いを受け株価はうなぎ登りになったのでしょう。

ところがそれも昨年まで。2015年夏頃にピークを打ち、そこからは釣瓶落とし。現在はどこまで下がるのか、それすらわからないという不穏な急落になっていることがわかります。中国の景気低迷のニュースが増えてきたのが昨年辺りからだったことを考慮すると、今後は爆買いによる売上げ増は望めず、次の決算結果は期待できないというのがマーケットの読みのようです。

だいたいテレビや新聞であれこれ騒ぎ出すとそのブームはほぼ終焉ということが多いので、まぁ大まかな状況としてはそうなのでしょう。でもホンマに爆買いはもう終わりなのでしょうか。

「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか?―中国人のホンネ、日本人のとまどい今年も中華系観光客は増えているし、その買い物意欲は旺盛ですから、爆買いが終わったとは俄に考えにくい。とすると、三越伊勢丹の株価凋落は富裕層による高級デパートでの買い物が減ることを予測しているだけで、爆買い全体としての動向を見ているわけではないかもしれません。

それを見事に解説しているのが中島恵さん。中国人の消費動向を語らせると一番という彼女が書いた『「爆買い」後、彼らはどこに向かうのか』(プレジデント社 2015年12月)を読むと、買い物内容の変化をうまく捉えています。

彼女の結論は「爆買いはまだ続く」。ただ、その中身は「相当変化していく」だろうとの意見です。曰く、「豊かな暮らし」があることを知ってしまった中国人は後戻りできないからとのこと。たしかに炊飯器ブームは終わったかもしれませんが、化粧品や雑貨小物の需要はこれからだというわけでしょう。

一方で、団体旅行から個人旅行へだんだん客層が変化し、とくに富裕層はモノからサービスへの希求が強くなるとの彼女の読みは、80年代から90年代以降に経験した日本人の旅行内容の変化から考えてもその通りでしょう。要するに、三越伊勢丹で高価なものをガンガン買う富裕層は減るかもしれないけど、中間層の日本雑貨買いはまだまだ続くということなのです。いうなれば爆買いから普通買いへの変化なのですが、頭数(購買数)が多ければ金額は大きいので経済効果は結構ありそうです。


一方でデパートも手を拱いてはいません。先週末京都の大丸を訪れると6FがLAOXフロアになっていました。デパートの対応も流行を追ってしぶといなぁと感じた次第です。中国国内で日本と同じ内容・品質の製品が出回るまで、そして元高円安の為替効果が薄れてしまうまで、中華系観光客の爆買いはその内容を変えながら続いていくんでしょうね、きっと。