兵法の極意

一泉庵

シロウトは戦術を語り、クロウトはロジスティックスを語る…という話があります。ウクライナのニュースを見ていて、そのことの大切さにまた気づきました。…

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ロジステックスとは後方支援のこと。わかりやすくいえば、軍隊が戦争を仕掛ける時、その食料や水の供給、補給路の建設に兵舎の確保などを行うことのことです。

ウクライナの場合、大統領選挙のやり直しを求めて国中から人々が国会周辺に集まり、運動を展開しているのですが、その数が半端ではありません。いったい、毎日の食料や宿泊はどないなっているんやろうと思っていたら、外国のニュースによると、野党が1000人規模の支援体制を組んだり、国会周辺の支援者の方々が寝場所を提供したり、いろいろなことをやっていることがわかりました。一部の人だけが盛り上がっているというわけではなく、みんなでいっしょに闘っているのです。面白かったのは、支援サービスの中にあった携帯電話の充電。これは今風ですね。

さて、私がロジステックスのことを知ったのは大学院生のときのこと。地下水の再利用の文献を調べていたら、米国のcorps of engineerという単語がよく出てきました。辞書を引くと、衛生兵とか陸軍技術兵とか、いろいろ出てくるのですが、下水を処理して飲み水にしようという話の流れで登場するので、衛生兵ではありません。技術兵という訳語も何となくわかりますが、曖昧です。
ある人とこのことを話していて、これが「工兵隊」に相当する単語だと気づきました(ほとんどの辞書にはそうでていませんのでご注意)。つまり、これがロジステックス担当部隊のこと。地下水再利用に関する文献が、米国工兵隊から出たものが多いのも、戦闘中に水を確保する技術開発に勤しんでいるということでしょう、きっと。

飲み水を確保するということが戦闘地域において如何に大切なことか、私が云うまでもありません。ウクライナの食料や寝場所の後方支援の話を聞きながら、派手な表舞台を支える裏方の、でもそれがなければ表部隊が成立しない裏方のたしかさを再確認した次第です。