スイスフラン暴騰

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eurosuis先週15日スイス国立銀行がスイスフラン高の防衛を撤回したため、スイスフランが暴騰しました。日本では大きなニュースになっていませんが、影響はかなり大きく、銀行大手などにも及んでいる模様。日本でも今後少しずつ厄介な話が漏れ出てくることでしょう。

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まず状況説明。ヨーロッパの経済不況が深刻化していく中、比較的優秀なスイスの通貨スイスフランを買いたいという人たちが大勢いて、とくにリーマンショック後に高くなる傾向がありました。さらに2011年東北大震災後の通貨急騰に困り果てたスイス当局は、ユーロスイスの為替レート1.20に防衛線を引き、「無制限介入」で死守すると宣言していました。

この「介入」とは、スイス側がユーロ建ての債権を買うということ。でも、無制限といいつつ限度があるのは当たり前。スイス国立銀行(中央銀行)の総裁曰く、3年続けてみたが「持続不可能だった」ため、介入政策を断念。その結果、スイスフランはわずか20分で40%近く暴騰! 9.11や3.11みたいな「事件」でした。

今回の事件がわかりにくい人はドル円に置き換えて考えてみましょう。
円高を防ぐためにドル円で120円という防衛ラインを引いているから大丈夫だと日銀が言っていたとします。日銀がそこまで言うのなら間違いないと信じ、金融機関などが山ほどドル資産を抱え込んでいたとしましょうか。それが、ある日突然日銀が手のひら返しで防衛策を放棄したとたん、円相場が急激な円高となって1ドル80円位に暴騰したら、いったい何が起こるでしょうか。

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銀行のドル資金は帳簿上で3分の2に激減、輸出産業の決済は吹っ飛んでしまいます。少し戻して安定するまで阿鼻叫喚の死屍累々。先週末スイスで起きたのはそんなこと。実際スイスの著名企業、UBS、リシュモン(カルティエ含む)、スウォッチ等の株価はどんどん下落中です。

識者らは影響は小さいと言っていますが、本当なのか。明らかにスイス経済には多大な爪痕を残しましたし、スイス観光への影響は避けられません。金融機関への影響といえば、英国大手のバークレイズ銀行は数千万ドルの損失を被る恐れがあり、FXで有名なアルパリUKはすぐさま破産申請、大手FXCMも顧客損失が膨らみ会社存続に問題が出てきたと報じられています。
(出典はこちら

また、暴騰直後に日本の明治大学が多大な損失を出したらしいという話がネットで流れたため、明治大学は広報課名で、「インターネット上の本学に関する流言について」と題し、以下の文章を出しています。

本日、一部ネット上におきまして、「本学がスイスフランで144億円の損失を出した」との情報が流れておりますが、そうした事実は一切ございません。(2015年01月16日 明治大学 広報課 発表)

話の真偽は私にはわかりませんが、上記文章では「144億円の損失」だけを問題にしていて損失そのものは否定していない感じにも読めますから、話は厄介そう。

さて、今回の事件の教訓は何か? 中央銀行を決して信用してはならない、これですね。介入などの人為的操作が無制限に続けられるなんてあり得ません。資金の限界もあるし、信じる者がアホ。翻って云えば、日銀の異次元緩和も同じ。無制限の国債買い入れが出来るわけありません。いずれ破綻します。バズーカ打ち過ぎでその日がどんどん近づいているという私の話を、スイスの話から察していただけると幸いです。

追記)スイス中銀と日銀はいっしょだという見解をネットで発見。こちらです