浪江町幼児の甲状腺がん発生リスクを指摘したWHO 

3.11

先月WHO(国際保健機関)が、東電福一原発事故に関する被曝線量を推定した報告書を発表。日本のメディアは報告書の数値を報じるだけで、説明がありません。ひょんなことでそのことを知り、ロイター英語版の記事を読んで愕然。やっぱり日本のメディアは信用なりません(怒)。

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週刊現代6月16日号のコラム欄に、今回のWHO報告書が取り上げられていました。曰く、日本の新聞では「数値を並べるに留まり、どれくらい人体に危険があるのか、読者にはさっぱりわからないもの」とのこと。USロイターの記事は違うゾという指摘だったので、早速そちらをチェック。すると…、

USロイターの記事の要点は、最初に挙げられているように3つ。

*原発事故後の日本の放射線量について報告
*2箇所の放射線線量〔推定)はより高い
*浪江町の幼児の甲状腺がんのリスクはより高い

日本の新聞ではどうだったか。浪江町の被曝について共同通信は、

1歳児の甲状腺の被ばく線量は、浪江町で100〜200ミリシーベルト、それ以外の福島県では10〜100ミリシーベルト、日本各地では1〜10ミリシーベルトとした(共同通信)。

と、数値のみの記述です。この文章の後で、

 今回の推計に対し、内閣府・原子力被災者生活支援チームの福島靖正(ふくしま・やすまさ)班長は「福島県産の海産物の出荷制限など政府が取った防護措置が考慮されておらず、実際の被ばく線量よりもかなり過大になっている」と話している。

とWHOの数値そのものを問題にし、被曝の危険性を薄めてしまいました。

また、日本のロイターは、

専門家らによると、全身の被ばく線量が最も高かったのは、福島県浪江町と飯舘村の2カ所で10─50ミリシーベルト。このほかの同県全域では1─10ミリシーベルト、日本のほぼ全域では0.1─1ミリシーベルトだった。
WHOによると、全身被ばく線量が100ミリシーベルトを超える場合、がんのリスクが高まるという。一方、幼児の甲状腺の被ばく線量は、浪江町で100─200ミリシーベルトだった。

と共同通信よりも詳しいのですが、やはり数字の列記が中心で、WHOがどう評価しているのかについては記載がありません。これで甲状腺がんについて注意を惹くことは難しい。
それにしても、「浪江町で100─200ミリシーベルト」とはかなり高い。御用学者でさえ安全だ、問題なしとは云えないレベルなのに、その危険性についてはシラ〜〜ッと触れず仕舞い。なんだこれ!?

この点について、USロイターの記事ではどう書かれているのか。まず推定線量の数値を紹介した後で、

Infants in Namie were thought to have received thyroid radiation doses of 100-200 mSv, it added. The thyroid is the most exposed organ as radioactive iodine concentrates there and children are deemed especially vulnerable.
“That would be one area because of the estimated high dose that we would have to keep an eye on,” WHO spokesman Gregory Hartl told Reuters. “Below 100 mSv, the studies have not been conclusive.”

訳してみると、以下の通り。(私の勝手訳です、念のため)

浪江町の幼児は100~200mSvの甲状腺被曝線量を受けていると考えられる。甲状腺は放射性ヨウ素が最も集まる臓器で、こどもがとくに影響を受けやすいとみなされている。
「(浪江町は)推定された高い線量ゆえ、われわれが注意を払わなければならない1つの地域となるだろう」とWHOの報道官グレゴリー・ハートル氏は語った。「100mSv以下については研究はまだ結論に至っていない」。

こちらの記事なら、浪江町にいる幼児の甲状腺がんのリスクはかなり高い、というWHOの見解がよくわかります。おまけにWHO報道官が注目すべき場所だと付け加えていることで、読者は発がんリスクに対する注意を喚起させられるはず。

たしかに週刊現代の云う通りでした。日本の新聞は数値だけを並べただけで、線量と発がんリスクとの関係をよく知らない読者には何のことだかわかりにくい。あるいは、危険はないと繰り返す当局担当者のコメントを使って、WHOの指摘の重みを消し去ることを目論んだみたい。

とにもかくにも、日本の新聞の視点が『被曝を強制する側』であって、決して『被曝を強制される側』のものではなかった、私はそう考えます。新聞にはやっぱり要注意。