復讐捜査線と内部被曝

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復讐捜査線 [DVD]メル・ギブソン主演の犯罪映画「復讐捜査線」。題名はスカタンですが、内容はなかなか面白い。犯罪といっても、核兵器製造の国家機密に関わるようなもので話もデカイ。国家や警察は全く信用できず、暗殺に使われる方法も放射性物質による内部被曝を狙ったものと今風の話がふんだんに織り交ざっています。なかなか面白い映画です。

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映画のストーリーはさておき、面白かった点を3つほど紹介しておきましょう。

まず、「事件屋」の政治コンサルタントがいう台詞がなかなか。

「事件を複雑にすれば様々な説が出るだろうが、結局真相は闇」

う〜〜〜ん、けだし名言だなぁ(笑)。また、

「きっかけがあれば誰もが世の中の不正を正そうと活動家になる。死も怖れずに」

これは突然変異のような活動家を揶揄している台詞ですが、前向きに解釈しても実に面白い。

また、権力に屈し仲間を売る同僚刑事が言う台詞で

「真実は暴けない。あるのは真実に見せかけたウソだけだ」

というのも意味深です。まぁ、そんな名台詞がふんだんに登場する映画でした。

次に、暗殺手段として使われる手法が興味深い。悪人らによって主人公の娘や主人公が被曝してしまうのですが、その手法は内部被曝。飲み物に放射性物質を仕込んで体内で被曝させてしまうのですが、ポスト3.11の現在、この方法がいかに恐ろしいものであるか、もう私が説明するまでもありません(云うとすれば、空間線量に執着するよりも内部被曝を心配する方が賢明だということでしょうか)。

ところで、暗殺に核物質を使った実際例としては、英国に亡命した元KGB将校のリトビネンコ氏の例があります(元ウクライナ大統領のユシチェンコ氏は核物質ではなくダイオキシンを盛られたとかで顔が変わってしまいましたが、彼も元KGB)。リトビネンコ自身、誰がやったかわかるような殺しは二流の手口、病死のように見せかけるのが一流だと証言していますから、KGBが暗殺で核物質を使うのは普通のことなんでしょう、きっと。

リトビネンコ氏の体内から見つかったのはポロニウム210だと云われています。ポロニウムを使った理由は・・・(止めた。解説すると悪いヒトに知恵を授けてしまいそう)。報じたのがBBC(イギリス国営放送)で、背後にいたのはMI5とMI6(MI6ってのは映画で登場するダブルオー機関のこと)。

この映画の制作者の1つがBBCだというのは何かの因縁でしょうか。クレジットタイトルを観ながら、何か複雑なものを感じてしまう次第です。

原題は「Edge of Darkness」。内容をそのまま反映している良い題名なのに、日本タイトルはあまりにもスカ。これは配給会社が能力不足なのか、それともこの映画を話題化しないような配慮なのでしょうか。