ビールを飲めば血糖値は上がります

.Lowcarboあるいは糖質制限

昨日奇妙な記事を読みました。ビールを飲んでも血糖値は上がらない?っていうウワサがあるらしい。驚きました。だって私なんかしっかり上がりますから。念のために缶ビール1本で実験してみると、やっぱりしっかり上昇(笑)。なぜそんなおかしな記事が出てきたのか、あれこれ考えてみました。(追記 2017/3/27)

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問題の記事は「ビールで血糖値は上がらない?ウワサの真相を調べてみた」。書いたのは市川衛氏(医療ジャーナリスト)。「ビールには人間が利用できる炭水化物がほとんど含まれておらず、飲んでも血糖値が上がらない」というウワサを聞きつけ、あれこれ調べてみたら、「ビールで血糖値は上がらない、とまでは断言できない」という、なんとも中途半端な結論になり、真相に迫れなかったらしい。

記事中で問題になっているのは炭水化物の定義。炭水化物の量は直接測るのが困難ですから、全体から脂肪やタンパク質などを差し引いて残りを炭水化物とするのが分析方法です。これは分析のことを知っている人なら常識ですが、市川氏は文科省が持ち出した「利用可能炭水化物量」なる概念を拡大解釈し、ビールにはそれが入っていない(少ない?)から血糖値が上がらないのではないかと考え、専門家に聞いてみたとのこと。

答えたのは山田悟医師(北里研究所病院糖尿病センター長)。ビールは血糖値をあげない(もしくは、ほとんどあげない)ということだと理解して良いかと(市川氏側に)問われ、「はい、その通りだと考えられます」と答えておきながら、最後で「銘柄によっては利用可能炭水化物を含むことが考えられるので、盲目的に「ビールでは血糖値が上がらない」とは言い難いと思っています」と回答。この答えはズルイ。

だってビールで血糖値があがるのかどうか、そこが問題なのに、どっちに転んでもオッケイな答では肩すかし。もし銘柄によって変わるというなら、キリンやアサヒ、サントリー他に違いがあるのかどうか、そこまで突っ込まないとさっぱりわかりません。真偽は自分で測ってみればすぐわかります。

論より証拠、私自身の体で調べてみました。飲んだビールは①エビスのプレミアムエビスと②サントリーのプレミアムモルツ。前者は麦芽100%、アルコール5%で内容量は350ミリリットル。100ml当たりの糖質量は3.0gと表記されているので缶1本の糖質量は10.5gです。後者はアルコール6%で100ml当たりの糖質量は3.2gだから1本当たり11.2gの糖質です。これらを食事の影響がない状況下で別々の日に1本ずつ飲み、血糖値を測ってみたら以下の通りになりました。

膵臓機能がヘタっている者の場合、10gの糖質で血糖値は30上昇するとされていますから(標準仮定)、ほぼその通りの上がり方になっています。普通の食事であれば私の場合1~2時間後くらいにピークが来るのですが、ビールを飲んで30分前後で大きくアップしているのは、液体状の糖質なので消化吸収が素早いからでしょう。

だとしたら、市川氏の記事や山田医師のコメントはどう考えたらいいのか。私思うに、記事を書いた市川衛氏も山田悟医師も血糖値の上昇について基本のキを外しています。それは、

糖尿人・もどきな人と健康な人とでは血糖値の上がり方が違う

ということ。どういうことか。

健康な人、この場合膵臓が問題なく働いている人のことですが、ビールであろうとパンであろうとご飯であろうと体内に取り入れたらインスリンがすぐに分泌され対応してくれるので血糖値の上昇は抑えられます(上がり方が少ない)。ところが糖尿病人やもどきな人は膵臓機能がヘタっているので、血糖値はスパイク状に跳ね上がってしまいます。

山田医師は自分は「ビールと低糖質をとった前後で血糖値を調べてみたいらほとんど変化がなかった」とコメントしていますが、それは彼が健康体だからでしょう。要するに市川氏も山田医師も健康な人を問題にしているだけだった、ということなのです。

でも、山田医師は北里研究所病院糖尿病センター長。糖尿病やその予備群の人のことを考えて発言するべき立場なのに、もし健康体の話で血糖値の上昇のことをあれこれ云っているのなら問題ありすぎ。彼が提唱する1日の糖質摂食量 130gというロカボ食は糖尿人にしてみればかなり危険な水準だと私は考えていますが、どうやら山田氏が相手しているのは糖尿病で困っている人ではなく比較的健康な人なのかなと思ってしまいました(残念)。

結論。糖尿病人やもどきな人の場合、ビールを飲むと血糖値は上がります。健康な人ならそれが見えにくいのかもしれませんが、膵臓機能に問題がある人は要注意(きっぱり)。

(追記 2017/3/26)1日の糖質摂食量 130gでも問題なしというのは健康人対象なのかと当初考えていましたが、インスリンや薬剤投与で高血糖を防ぐという従来からの糖尿病介入治療を前提にしているのかもしれません。2型のみならず境界型の人などが1食30gの糖質を摂食する場合、血糖値が180を超えることはザラにあるので、糖質制限で食後高血糖を抑えようとするならロカボという名前の「糖質オフ」は要注意。