消えていくガソリンスタンド

.EcoStyle

「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)驚きました。楡周平さんの本で取り上げられていたので調べてみたところ、全国のガソリンスタンド(SS)はどんどん廃業に追い込まれているんですね〜。知らんかった。

自動車の総数はここ数年増え気味なのになぜ廃業に追い込まれているのか?
表向きは経営上の理由からのようですが、この背後には厄介な問題がありそうです。

・・・

まず統計から押さえておきましょう。(社)全国石油協会が発表している統計によれば、ガソリンそのものの販売量は2004年度辺りをピークにして7%程度減ってきています。減少の度合いでみるなら、ガソリンよりも軽油の方が大幅に減っていることがわかります。

その石油を販売するガソリンスタンド(SS)は1996年に約6万箇所だったのが、2011年度には4万箇所以下になっています。つまり、約三分の1が無くなってしまったというわけ。この減り方はでかい。

gasBlm

一方で自動車の数はどうなっているのか。ガソリンや軽油を使うのは新車だけではないので、日本全国にある車の保有総数をチェックしなければなりません。こちらは約8000万台でここ数年は横ばい状態。(データは(社)自動車検査登録情報協会)。

rdlf131211bただ、トラックなどの貨物車の数をみると、現在約1500万台で1991年のピークから2割前後の落ち込みとなっています。おそらく、この減少が先の軽油販売量の大幅ダウンの直接的な原因なのでしょう。でも、自動車総数としてはむしろ増加しており、全体として減ったわけではありません。なのにSSの数は大幅に減っている。これはいったい何故なのか?

SSの老朽化で施設更新にお金がかかるため、というのがメディアで報じられた理由らしい。でも、それは根拠としてはちょっと弱い。だって、客がいて儲かるなら企業が行う設備投資には意味があるからです。じゃ他に理由はあるのでしょうか。

楡周平さん曰く、

テクノロジーの進歩によって、車の燃費が格段に向上したことに、その一因があることに間違いないでしょう

とのこと。

あぁ、そうか、そうだったのか。ここ最近の自動車の燃費向上は素晴らしく、1リットルで20km走る車はザラ。街を走るとプリウスやフィットだらけ、大型乗用車までハイブリッド仕様が流行だし、軽自動車の性能も随分改善されてきました。

そうなると、ガソリンの使用量は確実に減ります。従来のリッター10km未満の時代から考えると半分程度の激減です。これではガソリン消費量が増えることはありません。要するに、燃費の良い車がSSを駆逐してしまっているのです。

mayu131211今後もさらに燃費は向上するだろうし、電気自動車や燃料電池車なんてものも出てきそう…となると、ガソリン需要は減ることはあっても増えることはなし。多額の設備投資でタンク等を更新しても売れ行きが減っていくのであればジリ貧だ、そんな予測が昨今のSS廃業の背後にある本当の理由なのでしょう。

話はこれだけでは終わりません。楡さん曰く、周辺過疎地からSSがなくなってしまうと、その地域に住む人たちは遠く離れた所にまでガソリンを求めて走らなければならなくなり、とても不便になる…という「読み」を披瀝しています。これもまた「便利さ」「快適さ」が産み出す社会の破壊ではないかというのが彼の言い分です。当たっていそうだなぁ。

新しい動きは旧来の仕組みを変えてしまいます。それはそれで仕方のないことかもしれません。でも頭では理解できても、まさか自分の身にふりかかるとなれば状況は深刻です。

エコカーの普及でガソリンスタンドに降りかかった運命は他の分野でも起こり得る話。ネットの普及や環境問題の深刻化等々でゲームのルールはどんどん変化してきた、そんな感じの今年1年です。

rdlf131211a

ところで、
楡周平さんの 「いいね!」が社会を破壊する (新潮新書)は、きわめて刺激的で有益でした。おかげで私はここ数日調べモノやウラ取りで時間を忘れあっという間に1日が過ぎ去っていきます。興味深い話題についてはまた後日。

(追記)消えていくガソリンスタンド その2へ 続く