偽装ホテル

.opinion

rleaf1131031a食品偽装を誤表示と言い張る阪急阪神ホテルやザ・リッツ・カールトン大阪。7年も前からヤっていて「誤った」等というのは笑止ですが、問題はもっと根深そう。それを象徴するのがリッツ大阪の言記者会見でした。大メディアが指摘しない、でも本質的な、根の深い問題を私が1つ提起してみます。

・・・

ホテルのラウンジや中華レストランで食材を偽っていたザ・リッツ・カールトン大阪(以下、リッツ大阪)。オリオル・モンタル総支配人は26日集まった百人余りの記者の前で意図的な偽装を否定しました。真偽のほどは闇の中とはいえ、説明とは違うモノをお客に供していたのは事実です。

興味深いのは、ある記者が支配人の後ろの壁に掛けられていた絵画について質問した時のやり取りでした。

 「背後に飾られた絵は本物か」。会場を包む重い空気を破るように記者の一人が英語で質問すると、意表を突かれたモンタル総支配人は表情を緩め、「専門家 ではないのでわからない」と回答。しかし、別の記者が「客も専門家ではないので、もっと説明が必要だ」と声を上げると、「申し訳なく思う」と力なく話し た。(出典はこちらの産経ニュース

絵画の真贋にたとえ、食材の真偽を客が確認するのがきわめて難しいことを追及したわけです。英語でいうなら、You asked a good question. というところでしょうか。責任逃れに終始していた支配人がなぜ「表情を緩め」たのかは不明ですが、彼はとんでもない失言をしてしまいました。

というのも、リッツ大阪の売りの1つが18、19世紀のアート作品を館内に配置し、お客さんに「豊かな気持ちにさせ、心に残る体験をお届けできるもの」を提供していることだからです。

ザ・リッツ・カールトン大阪のインテリアコンセプトは、18世紀英国の伝統的なジョージアンスタイルで、18世紀の貴族の邸宅を彷彿とさせる、絵画や美術品の数々が飾られています。(リッツ大阪のホームページ参照

なのに、記者会見上の壁に掛けられる絵がホンモノだと即時に断定できなかった。なぜ?

貴重な絵画ですから、パブリックな場に配置するのは危険が伴います。日常的にはフェイクで代行していることもあるでしょう。つまり、支配人が自信をもって即肯定できないのは、実際にはニセモノを飾っていることもあるからではないでしょうか。それはそれで仕方ないことだと私は考えますが、だとしたらホンモノで「豊かな気持ちにさせ、心に残る体験をお届けできるもの」というのは奇妙です。

絵の真贋判定は専門家だって難しい。食材の真贋の比ではありません。客が絵をホンモノだと思うかどうかはホテルの信用が第一。なのに絵の真贋を即時肯定できないところに、このホテルの、ホンモノ絵画で環境を作り出すというコンセプトが素人だましかもしれないという不安を客に与えてしまったわけ。つまり、ホテル全体が〈食材だけでなく絵画に関しても)偽装の塊かもしれないということ。これは考えれば考えるほど気色悪い。

リッツは世界最高峰のホテルだと世間では言われてきました。リッツを礼賛するかのような著書もたくさん出ています。でも、客への説明責任をないがしろにし、食を偽って利益計上に勤しむホテルは最低です。「社会人として大切なことはすべてリッツ・カールトンで学んだ」とか、「リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと」というタイトルの本は、今回の件でブラックユーモアの類になったような感じです。

食材偽装の言い訳に終始し、自慢する絵画ですらホンモノかどうかを明言できないホテル。裏ではいったい何を行っているのか。少なくとも、支配人の説明によって、リッツ大阪が自慢する「心に残る体験」の偽装性への疑いは濃くなってしまいました。リッツ大阪は一度行ってもいいかなと思っていましたが、その気が失せました。不誠実な人たちとつき合うには人生は短すぎます。

rleaf131031b