不穏な船団

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半島を出よ〈上〉 (幻冬舎文庫)また中国の巡視船が尖閣諸島領海へ侵入。中国公船の領海侵入は22日以来とのことですが、漁船の侵入を入れるとかなりの数になるのではないでしょうか。
この領海侵入あるいは侵入もどきって、どこかで聞いた話だなぁ。あ、そうだそうだ、村上龍さんの『半島を出よ』でした。ということで、この本を先日改めて読んでみました。

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村上龍さんの『半島を出よ』。北朝鮮の反乱軍を詐称する特殊部隊が福岡市に突然侵入し、その後合流した軍隊とともに街を占拠してしまうという物語です。凄まじい内容ですが、ひょっとするとあり得る話かもしれないなぁと思わせるところが作者の巧い所。その話の発端になるのが、偽装漁船団が何度も領海侵入を繰り返しては中止するという動きでした。

何度繰り返されても何事もなし、そう日本の海保が油断した隙に1隻がスルスルと対馬か壱岐かへ上陸し、その後福岡ドームを武力で占拠してしまう、それがこの小説のスタート。今年になってから中国船籍が尖閣諸島付近をウロウロしていると聞いた時、まさか『半島を出よ』の北朝鮮船籍をそのままコピっているのかしらんと思った次第です。

まぁ今の状況では中国が武力的に尖閣へ上陸することはないと思います。でも、何が起きても不思議ではないのが世の中だとするなら、そんな暴挙を日本は想定しているのでしょうか。私思うにおそらく想定内。だからこそ、米軍といっしょに島嶼奪還訓練なんてのを別の場所でやっているのでしょう。

でも、そんな想定や訓練をする前に、中国が尖閣上陸を侵す前に、そうならないように万全の手はずを整えるのが国家や外交の腕の見せ所ではないのか!それとも先に中国に手を出させておいて、憲法改正や再軍国化を狙っているのでしょうか。だとしたら、ヤバイなぁ。

中国が覇権主義バリバリで、その領土拡大を狙っているのは、フィリピンやベトナムでも同じことをやっていることからわかります。だとしたら尚のこと、中国が軍事行為を起こす前に思いとどまらせるようにするのが平和主義、平和国家の役目です。

もう戦争の時代は終わった等というのは勝手な思い込み。世界情勢を考えるなら、妄想と言い切ってもいいくらいです。いくら多くの国民が平和ボケしているからといって国家までボケたらアカン。ボケない代わりのドンパチ指向ならもっとアカンタレ。

平和ボケしていないと国が抗弁するのなら、真摯に武力なし平和外交を尽くすべきですが、石原某や橋下某を放置する政治家や官僚の間には中国の武力行使を密かに願う向きがちらりと見えてしまいます。だからこそ、戦争反対な野中広務さんなんかが動いてしまうわけで、バカなことが起こる前に何とかしてほしいものだ、そう強く願う次第です。

ところで、今回『半島を出よ』を読み直して面白かったのは、日本という国は占拠された福岡を奪回するのではなく、国家から切り離して孤立させてしまうという下り。まるで原発事故が起きた地域が遭遇したような状況で、何か恐ろしさを感じます。また、見捨てられたと感じた福岡市民が反乱軍に親近感を感じるところも興味深い(ストックホルム症候群の変形)。そして、その北朝鮮軍に立ち向かうのが正規軍ではなく、前科ありとか社会のツマハジキ者たちだったりという設定が妙にしっくり。

福岡で育った私としては、通った高校の名前やよく知った地名などが登場するのが何か変な感じですが、龍さんが書いたフクオカがイシガキで起こらないことをことさら強く願います。とにかく、いろいろ考えさせられる小説でした。
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