神戸黒書

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神戸黒書市民がつくる神戸白書委員会 編  労働旬報社 1996/01/17

サブタイトルは、阪神大震災と神戸市政。30名を越える執筆陣がそれぞれの分野から、中規模の震災を大震災にした原因は「行政犯罪」だったと指摘したものです。…


本の出版日はちょうど震災1年後の1月17日。震災直後の混乱期にペンをとり、問題の解明と復興の道筋の提言に尽力している様子が本のページから滲んできます。

なぜ阪神大震災が起きたのか。予測のできない地殻変動が原因だったとすると、被災者は浮かばれません。不運なことだったと諦めてしまうと、今後の対応には役立ちません。専門家が指摘しているように、阪神大震災は地震規模としては中規模のもの。では、なぜ6000人にものぼる死者と4万人以上の負傷者、そして被災世帯40万人という大被害が生まれたのか、この本ではその原因と解決策に迫っていきます。

第一章は「なぜ大勢の人が死んだのか」。家が倒れた、火事が出た、そういうわかりやすい理由の背後には、倒れるような家を放置していた、火事が出ても消せなかった、消防用水がなかったということが当然あります。現象論と責任論をごちゃにしてしまうと、次の対策は打てません。この章では、神戸市が「国際無防備都市」であったことを細かく検証していますが、読んでいて背筋が寒くなってきます。

第二章は「被害を大きくした行政」。震災後、篠山神戸市長らは、震災の規模が大きかったから被害が大きくなったのであって人災というのは当たらないという趣旨の発言をしていたとか。この章ではそのウソを真っ向から暴いています。
たとえば、震災の21年前、神戸市からの依頼で大阪市大と京大の行った調査で「都市直下型地震が発生し、断層付近で壊滅的被害を与える」とされていましたが、これを当時の宮崎市政が隠蔽したこと、1985年にも地震予知研究会が兵庫県下でM7以上の地震がいつ起きてもおかしくないことを指摘していたにもかかわらず、神戸では「安全神話」の啓蒙に努めていたこと等々が本書で指摘されています。なぜそんなことをしたのか。そこに、神戸市株式会社と云われる採算重視の都市経営手法があったというわけです。

その他、第二部では避難所における差別問題や外国人への人権侵害など、メディアが取り上げない問題点をとりあげたり、震災後のアスベスト公害などにも触れています。本の基本的視点は「人権」だと説明されていますが、まさにその通りの内容になっています。本全体が現場からの貴重な生の提言であることも大きな意味を持っています。

タイトルからも想像できるように、行政関係者には耳の痛い、いや、読みたくもないような内容でいっぱいかもしれません。でも、本当に災害対策を志す気持ちがあるならば、この本と真摯に向かい合ってほしい。そうでなければ、阪神大震災の被災者は報われません。震災を拡大させた責任や、今後の行政対応の糸口を探ろうという方にお薦めします。

(追記)
拙著「あぶない水道水」でも、阪神大震災の時の水道に関する被害を紹介し、その原因と対策を探っていますので、ご参考下さい。