松下政経塾が日本をダメにした

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松下政経塾が日本をダメにした先日松下政経塾出身者による愚かな国政運営に触れました。同じことを考える人は多いらしく、きちんと経緯や批判を加えている本を発見。八幡和郎さんの著作です。

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この本は、松下政経塾とその出身者についていろいろなことを教えてくれます。私自身、松下幸之助さんが作った程度しか知らなかったので、塾を作った頃の意図や新保守系政治家の創出土壌についてよくわかりました。

取り上げられた出身者は、野田佳彦(現在首相)、山田宏(前杉並区長)、前原誠司(民主党政調会長)、そして原口一博、玄葉光一郎、樽床信二等々。経歴を示しながら、イデオロギーや政治手法等を分析しています。

その野田首相、昨日だったか米国で「自衛官の倅だから日米安保の重要性はわかる」と発言したそうですが、この本でも新保守系で自民党よりも右寄りであること、なぜ財務省の虜になるのか、そんなことが窺い知ることができます。よくもまぁそんな人物が民主党党首になったもんだと思う反面、だからこそ自民党Bだったのねと妙に納得してしまいます。

全体として彼の言い分は明快で、「松下政経塾ではダメ」、これにつきます。曰く、「政策に弱い」、「専門知識・国際知識が不足しがち」、「実務経験に乏しい」等々。最後に「日本を救える政治家を創り出すには」という章を儲けて、八幡さんの持論展開となっています。その論についての論評は横において・・・

ここからは私の言い分。

松下政経塾の出身者による国政運営に対する八幡さんの個々の批判は肯けます。でも、基本線としては八幡さんも野田某もいっしょ。なぜか。どちらもポスト3.11を全く踏まえていない。

象徴的なのは、この本の中で野田政権に対し、「とりあえずは、原子力再稼働の方向で対処し、国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)でも国益に反した安易な妥協はしないというのは上出来だ」としていますが、これはいったい何なのか!? 

著者の出身官庁が経産省というのが原発再稼働の背景にあるのでしょうか。でも、3.11が証明したのは、深刻な原発事故がこの国の未来にとって破局的状況(カタストロフィ)を生み出すことではなかったのか! 

また、COP17が国際的マヤカシであることはもう広く知られつつあると思いますが、それらを全く無視して今日的政治を語ることができるのでしょうか。

私は不可能だと考えます。したがって、いくら八幡さんが野田政権にあれこれ批判を加えても、私には「同じ穴のムジナ」のコップの中の争いにしか見えません。残念。

さらにもう1つ。彼は滋賀県大津市長選挙に2回立候補し、どちらも落選しています。その後政治家への夢を捨てたのか。いやいやそうじゃないでしょう。松下政経塾出身者に対し、辛辣な批判を加えるのはライバルだからこそではないのか。思想的にもそんなに離れていないようだし、経済優先・原発再稼働なんか全く同じ。そういう風に考えると彼の衣の下に鎧が見えてきて、まるでこの本が彼の次の選挙教材に見えてきました。