関西電力が高浜町長暗殺指令?

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関西電力「反原発町長」暗殺指令3年前に奇妙なニュースが流れました。関電と警備会社役員とのイザコザに関するものですが、それに先だって『週刊現代』でキナ臭い話が出ていたので、あれっと思ったのを覚えています。左の本はその真相に迫ったもの。要するに、当時関電幹部が警備会社に地元町長の暗殺指令を出していた、請負者がそれを暴露したため警察が(命じた関電幹部ではなく計画を暴露した2名を)恐喝罪で逮捕したという話。ホンマでっか!

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話の内容が内容なので、本の中から事実関係(と思しきもの)だけを列記してみましょう。

1999年7月、関西電力高浜原子力発電所は警備のために獰猛な犬を使った警備体制を作り上げた。その警備を考えたのは当時の副所長。一方、請け負ったのはダイニチという警備会社。その役員が加藤義孝さんと矢竹雄兒さん(報道で恐喝犯とされた2人)。この2人を関電幹部に引き合わせたのは元関電内藤副社長の息子(加藤さんの旧友)。

2008年3月、『週刊現代』で「関西電力高浜原発『町長暗殺指令』」。一回目は「『実行者』が決意の実名告白」、2回目は「関電執行委員も”暗殺計画”の存在を認めた!」。

2008年8月、上記記事の告発者2名が雇い主であった関電の同原発の元副所長を恐喝たと告発され、逮捕された(命じた関電幹部ではなく、暗殺請負を暴露した2名が逮捕された)。罪状は警備犬の代金請求をめぐる恐喝があったというもの。その後の裁判で2名には執行猶予つきの懲役刑が下された(年月日不明)。

とりあえず、こんなところでしょうか。

著者の斉藤さんは事件当事者である加藤・矢竹両氏らの話を聴き取り取材してまとめています。著者自身、大企業の関西電力が殺人命令を出すなんて半信半疑だったため、でっかいネタだと興奮しつつも真偽の狭間を逡巡しています。本中でそのことを明らかにしているのは、決めつけ的なルポに比べると非常に共感を覚えました。

さてさて、これはフィクションなのか、それとも本当の話なのか。

暗殺指令にいたるまでの話は告発者2名の説明なので真偽は不明としか言いようがありません。雇い主の頼みは断れない。だんだん非人間的な判断を強いられる過程も本中で触れられています。実際暗殺しようとあれこれ動いたとの告白には唖然としますが、未遂で終わっています。

犬を使えば犯人はわからないというアドヴァイスをしたのが関電のその副所長というのですが、事実だとしたら関電は殺人指令企業。1個人の暴走といっても会社としての責任は免れ得ないでしょう。

そして、関電の理不尽さに対抗して2氏は週刊誌に告発。その「告発」の後で意味不明の逮捕が行われた事実経過から考えて、警察の動きは加藤・矢竹両氏に対する報復手段だったんだなぁと考えるのが普通です。それが醜悪な暗殺指令を覆い隠すための報復措置なのか、それとも関電という大企業に対する評判を落としたことに対するオトシマエなのかどうか、そこまでは判断する材料がありません。

本書中でも触れられているように、狙われた町長が別に反原発でも脱原発でもなかったようなので、本のタイトルのような反原発町長を狙った暗殺というものではなさそうです。だとしたら、暗殺指令そのものが地元利権の奪い合いを巡るヤクザな争いだったのか。どちらにしてもドロドログチャグチャな話。私見をいうなら、原発マフィアがMOX燃料導入をめぐって焦ったあげくの暴走というのはあるかなあ・ありそうだなぁという思いがします。理由は何にしろ、とんでもないことです。

原発再稼働などという暴挙がひたひたと進む裏側で、暗殺指令みたいな物騒な反社会的活動が行われているとしたら、原発マフィアって何でもありで、非合法なところもイタリアのマフィアといっしょ。警察もマフィアの味方では、この世は闇です。そしてその闇の先に光はありません。

(追記)2019年9月27日 関電と高浜町の醜い関係が発覚