この国は壊れている その4

.opinion 3.11

国家や企業が壊れていても、個人まで壊れてしまったら大変。そうならないためにはいろいろ知識や知恵そして少なからぬ努力が必要です。翻って、壊れた「穴」狙いというのもありでしょう。秋田県大潟村の19戸の米農家が行ったのはそういう快挙だったというべきかもしれません。

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その快挙とは、

「コメの生産調整(減反)に反対してきた秋田県大潟村の農家19戸でつくるグループが今年だけ、減反が条件のコメの戸別所得補償制度に参加した。減反分のコメの耕作権を東日本大震災の被災地から買い、作付面積は従来のままという手法だ。同制度の交付金の一部は、震災で被災した大学生の支援に使う。」(朝日新聞2011年12月2日  左図は朝日新聞ネット版2011年12月2日記事にあったもの )

ということです(新聞記事へのリンクはしばらくすると切れるのでご注意下さい)。

大潟村では国の減反制度に反対する生産者がいました。今回の震災で、国が具体的な補償や支援を行うことを期待したが、なかなかそうはならない。でも一方で、そのグループの面々にとってお断りな減反制度を使えばいろいろな震災支援ができることに気づきました。

減反は1年限りの申請更新とのことなので、今年だけの期限つきで減反し、戸別所得補償制度による交付金を受け取ることにしました。一方で、被害を受けた農家の耕作権を買い取って減反分の耕作地を活用するわけですから実質的には減反せずにコメ作り。おまけに、戸別所得補償制度による交付金から被災農家に支払う権利金を差し引いた約2200万円を秋田県内にいる被災学生の支援に使うことにしたそうです。

国の制度をうまく使った「一石二鳥」いや「一石三鳥」でしょうか。快挙です。新聞を読んでいると、代表世話人は本HPで何度も紹介してきた、拙宅のお米をお願いしている黒瀬さんでした。御本人のHPには「お上に政策あらば、民には対策あり」というタイトルで3日付けでこの件の紹介あり。なかなか味のある、皮肉の効いたイイ題だなぁ。

こんなことができるのは、新聞にも指摘されていたように、交付金に頼らずとも赤字にならない余裕がある農家だからでしょうが、要するに確固たる農業力がなせる技というか強い生産基盤の証。またそれが日本農業の1つの明るい未来を見せているのではないかと思ったりします。

国が壊れている壊れていると嘆くだけでは話は何も始まりません。国が壊れ、制度が穴だらけであっても落ち込むことはない。逆に、だからこそ浮かぶ瀬もありという実例です。それにしても、黒瀬さん他大潟村の米作りグループの快挙には拍手です。