東京電力の計画停電、その狙いは?

.opinion 3.11

東京電力と政府は、福島第一原発事故後「計画停電しないと、突然の大停電が起こって大変ですよ」「夏場の電力不足で、深刻な事態になりますよ」と大宣伝を行っています。本当に電力は足りないのでしょうか? それとも東電や政府には何か別の狙いがあるのでしょうか?

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日本は夏場の電力需要に応えるべく、原子力発電所などの建設を推進してきました。いや、原発を推進するために、夏場の需要ピークを口実にしてきたという方がいいかもしれません。

国や電力会社は「原発の発電コストは安い」と宣伝してきましたが、それはウソ。ホントは、「原発周辺の自治体へ配分する巨額のお金」「使用済み核燃料を処理するための巨額のお金」を別建てにしたり政府持ちにしたりしています。これらをコストに上乗せすれば、福島第一原発だけでも数兆円規模のお金がかかっています。今回のような「大事故が起こった時の賠償費用」まで考慮するなら、数十兆円以上のお金が税金で充当されることになりますから、原発の発電コストは自然エネルギーによる発電コストとは比較にならない位高いのです。

電力会社は原子力発電を進めるために、TVや新聞に巨額の広告宣伝費を流し込み、マスコミ有名人を使って「原発がないと生活が成り立ちませんよ」というメッセージを国民に送り続けてきました(洗脳教育と云ってもよいでしょう)。一方で、原発問題を掘り下げるテレビ局には「コマーシャル全てを引き上げるゾ」と言って脅してきました。その『甲斐』あってか、テレビ局各社は「原発反対!」のデモがあっても殆ど報道しない状況となっています。

ところが、東電福島原発の大事故は隠せません。このままでは国民の側から「原発反対!」の声がわき上がるのは避けられない。そこで登場してきたのが「計画停電」。東電曰く、「計画停電しないと突然の大停電が起こって、もっと困りますよ」、「原発がないと電気が足らなくなって、みなさん大変ですよ」、「原発反対!を言う人は、みなさんに苦労を強いるトンデモナイ人たちですよ」というわけです。

それでは、東電福島第一原発事故以来、今年3月後半の「計画停電」は、どのように実施されたのでしょうか? まず、「計画停電」とは名ばかりで、「突然停電」だったり「急遽停電撤回」だったり。これでは電気設備の立ち上げ停止に手間のかかる施設にとっては「無計画停電」といっしょ。減産減収に追い込まれた会社も多かったはずです。

また、「計画停電」を余儀なくされたのは東京都周辺の地域や荒川区・足立区など、中小企業は多数あっても大企業がない地域が狙い撃ちされました。地域によっては交通信号が使えなかったり、病院の設備が使えなかったりで様々な影響があったことが報じられました。しかし、一方で東電本社がある地域は実施区域には入らず、輪番制どころか不公平停電だったというのが実態です。「計画停電」とはいったい誰のための停電だったのでしょうか。「計画的弱いもの苛め停電」だったと言っても過言ではないのでは?

そして「計画停電」の実施と同時進行で登場してきたのが、「夏場には電力不足でもっと大変ですよ」というキャンペーン。何のため? 「原発が動かないと夏場にはもっと困ったことになりますよ」というわけですが、キャンペーンの裏側には「原発がないと生活が成り立ちませんよ」、「原発反対、運転停止なんか言うと、自分の首を絞めるだけですよ」等という国や東電の本音が透けて見えます。

というのも、福島原発が動かなくても関東圏内の電気は十分確保できるからです。とりあえずの手法はまずピークカットとピークシフト。さらに、休止中の火力発電所を動かし、揚水発電所をしっかり稼働させれば問題ありません。通常は原発とパッケージになっている揚水発電ですが、夜間の火力発電で揚水しておけば昼間のピーク需要に対応可能です(既に週刊現代などの雑誌メディアではこれらの発電・節電手段の詳細が指摘されています)。

でも、これが簡単に実現できると、原発推進を正当化したい国や東電は面白くないでしょう。東電社長が休止中の新潟柏崎原発を動かしたいと言ったりするのは、原発以外の方策をできるだけ避けたい本音がありあり。彼らが伝えたいメッセージとは、「原発がないと、みなさんが生活に困りますよ」であり、その次にやってくるのは「東電と政府はみなさんのために原発をやってきたのですから、原発災害はみなさんのお金(税金や国債)で償って下さいね」ということなのでしょう、きっと。

「電気を無駄に使い過ぎている、だから節電しよう」これ自体はとても良い考え方。でも原発推進をするために「計画停電」や「夏場の電気需要逼迫」を脅しで使うのはおかしい。東電が火力発電などを合理的に運転したり揚水発電を採用すれば、リクツ的にも夏場の電気需要はカバーできる見込みです。また、太陽光発電、風力発電、地熱発電など自然エネルギーを活かす方法を大幅に取り入れるためにも、原発を基本とする現政策からの大胆な政策転換が必要だと思われます。

原発なしでも問題なくやっていける未来を作るためにも、「計画停電」という脅しに屈せず、「原発はいらない」「原発反対!」と言い続けていきましょう。