過当競争? トイレ水洗水の少量化

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ここ数年水洗トイレの洗浄水量を少なくする動きが活発になっています。活発というより過激とも云っていいくらい。でも、洗う水量をゼロにすることはできません。便器メーカーがそのことに気づいているのなら、次の動きは私らが実践している方法を採用して欲しいものです。

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日本で初めて水洗トイレが登場したのは明治38年(1905)。最初の水量は知りませんが、1970年代は20リットル前後。都市化に伴い、水洗トイレの普及が進み、それに応じて水洗用水道水の量もどんどん増えていきました。マンションなどの建設で水需要が逼迫するので、やれダムだ河口堰だの云って水源開発が正当化されてきたのもこの間の動き。

時代は変わり、技術開発の甲斐もあり、水洗トイレで使う水の量は大で10リットルを切り、いまじゃ4リットル程度まで低下。凄いな。エコが大切という追い風で、不況の時代に水道料金も削減できるとくれば流行るのもよくわかります。一方で、水道水が売れなくなった水道当局の苦笑い(歯軋り)も聞こえてきそうですね。

わかりにくい? だったら、あなたの1日を考えてみて下さい。朝起きてトイレ、そして歯を磨き、朝食を食べ、身繕い、お仕事、途中でトイレ、あるいは炊事洗濯、昼寝?、そしてまた食事……。この中でトイレの回数はどれくらいでしょう? その回数が1人5回としても1回10リットル削減できたら、1人50リットルのマイナス、これ掛けることの世帯人数でどれくらいの割合が全体として減るでしょうか? 4分の1、あるいは3分の1以上のマイナスになるかもしれません。これはすなわち、水道使用料減、水道料金減に繋がります。大きいですよ〜。水道当局が真っ青になる位。

こちらの方がよっぽどエコですし、減った水道水に相当する分の水源コスト、処理コスト、給配水コストが要らなくなるわけですから、本来なら水道料金は減るはずですが、そうはならないのが現在の水道サービス。

既にこの「現象」は全国で起こっていて、そのことが無駄なダム建設をストップさせたり、水道関連施設の見直しに繋がれば良いのですが、役所はそう考えないのか、問題を積み残したまま料金値上げに踏み切るというトンデモナイ動きが出ていることが既に報道され、私もコメントしたことがありました(追記)。昨今のトイレ水洗量削減トイレの動きは、その水道当局の混迷をさらに拡大させていくことでしょう(きっぱり)。

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話を変えます。
トイレの水洗量をいくら減らそうとしても、排泄物を洗い流すためには何らかの水量が要るわけで、決してゼロにすることはできません。タイトルで過当競争といったのは、最近のメーカーの動きは最小量に向かっての投資効果だけが際だって上がる時期に入ってきたという意味に他なりません。まぁ水を使わないトイレというものありますが、それは水洗地域外での話なので横に置きましょう。

となれば、水量をゼロにするにはどうしたらいいか。一例としては私の家等で実践している方法がいい。雨水の採用、つまり飲める水道水を使うのではなく、天からのもらい水でトイレを洗ってもらうというやり方です。雨水を貯める装置とそれをトイレに繋ぐ配管が要りますが、新型の便器が必要というわけでもありません。そもそも雨水の水コストはゼロですが、コスト・ベネフィットはそれぞれの家庭で考えてみて下さい。

私が云いたいのはトイレの水洗水量減らしの行き着く先は、最小水洗量の研究や技術開発ではなく、水道水そのものを使わない発想への転換とその定着化であってほしい、そういうこと。

トイレメーカーにそのことを強く望みたい。技術的な細かいことをいえば結構いろいろあるのですが、もうそろそろメディアもそのことに気づいて欲しいものです。

(追記)2006年の記事は英語翻訳され、朝日の英字版新聞に載ったそうな。それを読んだアルジャジーラ(あの中東のメディアですよ)から私に連絡あり。水の大切さを日本で取材したいのだが、英語の取材を受けてくれる処がほとんどない。あんたは大丈夫そうだから取材したい。時間はあるか?とのこと。ちょうど父の手術入院に付き添って福岡だったので無理だと応え、そのまま。ちょっと残念。