旧暦はくらしの羅針盤

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旧暦はくらしの羅針盤  小林弦彦 著 生活人新書
先に紹介した「旧暦と暮らす」(松田賢治著)と同様、こちらも旧暦の本です。旧暦のことが気になって取り寄せて読んでみましたが、こちらはより実務的でストレートに説明しています。先の本も良い本ですが、どちらか1冊選べといわれたら、私はこちらを薦めます。…

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タイトル:旧暦はくらしの羅針盤 小林弦彦 著 
NHK出版 生活人新書 2002.12.10

先の本で私は旧暦を自然暦と読み替える大切さを学びました。この本は、先の本で紹介されていたもので、基本的な内容は先の「旧暦と暮らす」と同じです。ですが、旧暦関連の知識、旧暦と季節感との関係や古典に登場する暦の説明、そして改暦の話などが先の本よりも整理されていて非常に読みやすく仕上がっています。こちらが元文献といってもいいかもしれません。

著者はクラボウの元・重役。70年代のタイでの経験から旧暦に関心を持ち始め、そして、現在の暦に依存していると衣服の販売で損をすることに気づいたそうです。なぜか。西洋暦ではアジアの気候風土に合致しないからだというわけです。アジア各国で使われている暦、つまり陰暦とか農暦というものでは、ある一定のルールの下に閏月を組み込むのですが、これが日本の気候にぴったりするというのが著者の言い分です。云われてみると、なるほどそうかなと私も納得のいく点があり、興味がわいてきます。

とくに第三章の「旧暦で本当の季節感を取り戻そう」は、私たちの日常で忘れがちなことを見事に思い起こさせてくれるのです。たとえば、七草がゆは現在年明け1月すぐですから、この時期に七草があると思っている人の方が多いかもしれません。私もずっと気になっていましたが、かといって自分で調査するわけでもなし、そのままにしていました。でも、そんな時期に七草はありませんから、実際、どこで無理矢理温室栽培したものをスーパーやデパートで販売しているだけでしょう。旧暦換算で考え、七草がゆが旧暦の1月7日だと知っていれば、現在の2月中旬ですから、この積年のナゾは簡単に解けました。こんな一例でも私たちの季節感は人工的に破壊されているというべきでしょう。
また、旧暦を今の西洋暦に持ち込もうとして滅茶苦茶になった例にはいとまがありません。たとえば、梅雨の6月がなぜ水無月なのでしょう? それは旧暦で考えればすぐわかります。だって、昔の6月は今の7月付近ですから、晴れで雨が降らない時もあり、それで水無月だったのですから、当たり前。こういった「誤解」を解いて季節感を取り戻すには、旧暦を学ぶしか方法がありません(きっぱり)。

もうひとつ。暦とは関係ありませんが、江戸時代の不定時法の紹介は私には圧巻でした。というのも、私たちの家ではここ5年ほど、夏は早く寝て早く起きる、冬は少し遅めに起きるというサイクルが常態化しています。あまりテレビなどを見ない生活をしているせいかもしれませんが、日の出と日の入りに生活のリズムが重なってくるような感じが妙に心地よいのです。その寝起きは早いのは年寄りだなんて話もありますが、既に江戸時代では不定時法によって昼夜の区分けは合理的に行われており、それが先の私の生活リズムと同じだと知った時、非常に感激しました。暦とか時間の決め方とか、もっと自然のリズムで考えていく問題だなぁと改めて考え込んでしまいます。

毎日の生活に自然のリズムを取り戻すためにも、一度「旧暦」を学んでみることをお薦めします。そのために、この本を是非推薦いたします。

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