日本人「総奴隷化」とは?

.Books&DVD… .opinion

森永卓郎さんの本『日本人「総奴隷化」計画 1985-2029』がお亡くなりになった1ヶ月後に出版されたので、早速購入しました。刺激的な題名を見て大袈裟だとか、陰謀論的な本だとかと訝しがる向きもあるかもしれませんが、内容は至極真っ当。読み進めると、あの時の状況はこう考えると見えてくるなあと思う所があちこちにあり、パズルが嵌るように思うのは私だけではないはず。

・・・・

日本人「総奴隷化」計画 1985-2029 森永卓郎著、徳間書店
  ~あなたの財布を狙う「国家の野望」〜

森永卓郎さんはテレビやラジオのコメンテーターとして活躍する一方、ベストセラー「年収300万円時代を生き抜く経済学」(2003年)など庶民目線の経済の本を何冊も書いたので、ご存じの方も多いと思います。その森永さんは65才になった時に、自主規制を一部外して財務省の本質を明らかにする本「ザイム真理教」を執筆しました。ところが、この国の支配構造の姿を赤裸々にする本だったので、財務省+国税庁からの圧力を恐れる大手出版社は軒並み尻込みしてしまい、出版できない状況に陥りかけます。しかし、唯一手を挙げてくれた三五館シンシャで2023年5月に出版できて、20万部を超えるヒットとなりました。

その後、森永さんは2023年11月(66才)に「すい臓ガンのステージ4(後で原発不明ガンと判明)」「余命4ヶ月」と宣告されました。その時に「残された命が続く限り、自主規制はしない」と決意して、日航123便事件を取り上げた「書いてはいけない」を執筆。その後も2025年1月28日に67才で亡くなるまで精力的に執筆を続けたのは多くの人たちがご存じの通り。今回の森永さんの本は、これまでの集大成のような本になっています。

さて今回のタイトルを見て、そうやそうやと最初から頷く人はかなり少ないかもしれません。かく言う私も、「総奴隷化」は言い過ぎじゃないか、と最初は思ったくらいです(注記)。でも、本を読み進める中で、あの時の状況はこう考えたら確かに見えてくるなあ、と思う所があちこちにあり、解けなかったパズルが次々に嵌るような思いをしました。

日航123便事件に隠された日本政府の暗部や米国の言いなりになってしまった経緯については既に紹介しましたが、今回の本でも分かりやすくまとめられています。「構造改革!」と言いつつ、米国と巨大外資に都合が良いように日本を根こそぎ変えてしまった小泉内閣の本当の姿も浮き彫りになっています。庶民には増税し富裕層には大減税の財務省の醜悪な姿勢が現在の五公五民に繋がっていく様も明らかにされています。この本では森永さんが今までの本で展開されたことがコンパクトに整理してまとめられているので、わかりやすい。詳しく知りたい方は森永さんの「ザイム真理教」「書いてはいけない」を合わせて読めば更に良いでしょう。

先日記したように、日本における国民負担率は所得の約半分、つまり五公五民。江戸時代なら百姓一揆が起きていた状況と同じなのに何も起こらないのはなぜか。「茹で蛙」状態を変えるには、まず現実を知ることが第一歩。でも、庶民増税を推進する政治家に票を入れたり、そもそも選挙にすら行かない無関心層を見るにつけ愕然としてしまいます。

森永さんのダイイングメッセージになった感のある『日本人「総奴隷化」計画 1985-2029』。「総奴隷化」なんておかしいと思っている方にこそ、是非読んで考えていただきたいものです。超お勧め。(IZ)

***

(注記)森永卓郎さんとは視点が違いますが、『テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』を著したヤニス・バルファキス(元ギリシア財務大臣)もネット社会の現状をテクノ封建制あるいはクラウド農奴制と喝破しており、現代の庶民の状況を考えるのに参考になります。