iPhoneで3Dスキャン あるいは USDZ

Mac/Web/WP/Mobile

3nmプロセスで製造した最新チップを使った今回のiPhone15Pro。どれくらい凄いのかチェックしがてら、時間のかかる作業だった3Dスキャンにトライしてみました。やってみると、あっさり出来てしまってびっくり。高価なスキャナーの真似事のような作業が掌の上で実現できるとは時代の変化に圧倒されてしまいました。その技術の進化の一端を紹介しましょう。

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1990年代、わたしは3DCGにのめり込んでいました。マシンはMac、ソフトはMacRenderman(PIXAR)他いろいろ。当時CG関係の友人たちとの会話といえば、何日で計算が終了したのか、メモリとHDはどれくらい積むのがいいのか、高い某ソフトは使い易いのかどうか等々、ニッチでテクニカルな話ばかり。

当時は一般向けインターネットの黎明期、通信速度も光はまだ姿なしの、ピ~~ッヒャララの300から1200、2400bps程度の世界。コンピューターのハードウエア性能は今よりも随分低く、理論的には出来るはずの計算作業が数日内では完了しないこともまま。VRというのは夢のまた夢のような感じでしたし、AR(拡張現実)という用語なんて聞いたこともなかった。

一方でお金をたっぷりかけたCG映画やゲームではモーションセンサーで動きを計測し、それをCGフィギュアに同調させて動かすというのは当時もあり。でも、それは高価な最先端機器と優秀な人材そして潤沢な予算あってのこと。一般人が家庭でやるようなものじゃありません。

それから30年、3DCGの世界も大きく変わりました。たとえば最近のパソコン能力は90年代を遙かに凌駕し、それに応じてソフトウエアも大きく進化(最近はソフトといわずアプリという軽い用語)。おかげで大型中型計算機のマーケットは完全崩壊し、あのIBMですらクラウド関連に業態変更しなければ生き残れないことになって早や10数年。

Appleはといえば、数年前にLiDARなど拡張現実(AR)関連の技術を自社製品に実装。身近なところではポケモンGOのようなゲームがまさにそれ。その後関連アプリも登場し今ではiPhone上で10を超える品揃えとなっています。ただ、未だ取っ付きにくいせいか関連書籍は専門書数冊のみで一般書はほとんどなし。かくいう私もAppleの実装話を聞いた時、そんなものはまだまだ先の話だろうと思っていました。

ところがところが、現実は遙かに進んでいました(現実は拡張していた!?)。今回15Proを入手したこともあり、半信半疑でAppleが導入した技術を試してみたところ、あっさり3Dオブジェクトを作れてしまいました。呆れるほど凄いと思ったのは昔を知っているからか。

使ったアプリはiPhone上のScaniverse、対象は友人知人の造形作品。ScaniverseはなんとあのポケモンGOのNiantec社が提供している3Dスキャンソフトで、完全無料。LiDAR(Light Detection And Ranging)とNoLiDAR双方が使えますが、比較的新しいiPhoneやiPadが必要です。詳しくは、iwamaさんの【非公式】Scaniverseの使い方全てまとめました【iPhone 3Dスキャン】などを参照下さい。


作り方は簡単。スタートボタンを押してから対象となるモノの周りをゆっくり回りながら写真に捉え、ブツの三次元座標と素材の色や質感などを取得するだけ。それをアプリがUSDZ形式などで保存するので後で使えるというわけです。

どんな感じなのか。私の驚きをどれほど伝えられるかわかりませんが、とりあえず、本サイトに1つアップします。

鳥の置物画像をクリックするとUSDZファイルがダウンロードされるので、iPhoneなら右上にあるUSDZアイコン(ワイヤフレームの立方体みたいなもの)をクリックすれば、実装されたARkitによって表示できます(もしあるなら)。オブジェクトの方を選べばグリグリ回転させたりピンチで拡大縮小させたりして楽しめます。

ご注意:お手元のMacOSやiOSが古いと表示できません。でもiPhoneなら表示できるかもしれませんのでトライしてみて下さい。

ところで、USDZというのはピクサーが開発した空間表現のファイル形式で、90年代のRIB形式から始まり映画のトイ・ストーリーを経て洗練され現在に至っているとのこと。つい最近、有名5社が標準化に向けて技術公開していく方向が示されたばかりです。

仮想現実に拡張現実、どんどん進んできましたね~。それも自宅で3Dスキャンして楽しめるまでになったのはちょっとびっくり。モデリングに悪戦苦闘していた私の90年代は何だったのか、遙かな過去になった感あり、です。これもまた、時代は変わる、でした。