ル・プレ・カトラン その1 Le Pré Catelan

.Travel & Taste

preCLe Pré Catelan……、パリの西、プローニュの森にあるレストラン。森といってもまぁ林のようなものですが、レストランの回りを小高いマロニエの木々などで囲まれており、景色の良い席をもらえると緑の木漏れ日も得難いご馳走になります。

私が最初にパリを訪れたのは22年前。その時に某社顧問に招待され訪れた記憶が朧気にあり、今回は連れ合いと結婚25周年記念。当時は1つ☆だったのが、シェフが変わり店も改装され全くといっていいほど別の店に生まれ変わり、2007年からはミシュランの3つ☆に輝いています。さてさて、どんなディナーが楽しめるのか、期待ワクワク。

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こちらは仏語がてんでダメ。「ボンジュール。ジュマペール、アリタ……」の後は、「I have a reservation of today’s dinner……」と、すぐに英語に切り替わり、相手もすぐに英語対応にチェンジ(苦笑)。そして中へ。

ここはルイ16世の別荘だったものを活用しているとか。室内は豪華なシャンデリア等の内装で飾られていますが、天井も壁も白を基調としているので古さを感じさせません。レストランは3区画あり、私たち夫婦が案内されたのは真ん中のフロアの一番奥、緑の庭園を臨む良い席でした。当日、そのフロアはもちろん、一番奥のフロアも常連さんやその家族連れでいっぱい、手前エントランス側の鏡の間も1時間もしないうちに満席状態。土曜のお昼とはいえ人気ありますねぇ。

最近は必ずしも男性のタイ着用や女性のドレスは必要条件ではなさそうで、ジャケットでノータイという格好の人もちらほら。そういえば、以前フランス人の誰かに聞いたら、「雰囲気が馴染んでいるかどうかが問題なんであって、ジャン・ギャパンにネクタイはいらんだろう」とのこと。納得々々。男性なら貫禄の方がタイに勝るということでしょうか、ドレスコードをカタチだけで捉えても仕方ないという話ですね。

さぁ。お待ちかねのお食事。最初は食前酒の注文です。

「アペリティフはどうなさいますか」とソムリエ。
「アペリティフ・アラ・メゾンは何でしょう? 何がお薦めですか?」と、こちらが仏語と英語をごっちゃに、ちょっと気障に聞き返すと、「何とかと何とか何とか…」と、すべてシャンパンのお誘い。

メニュー選びにたっぷり時間をかけるので間もたせの意味もあり、GOSSETのロゼを注文。その日最初の注文だったらしく、新しいのを抜栓してたっぷりフルートグラスへ注いでくれました。ちょっとリキュール味がありますが、アフターが微妙に甘く美味しく、さい先のよいスタートです。

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その時点で渡されたカルテ(日本でいうメニュー)を見てちょっとびっくり。HPに載っていたのと少々違う(あらら)。

正直にいうと、今回の旅行は前もってHP上にあるカルテ(メニュー)を解読し、この日に備えていました。アラカルトはこんなものがあり、メニュー(セット)は何々で、2人でいったい何を選ぶのか、あらかた相談していたのです。ル・プレカトランの場合、お昼だからまぁディジョネ(ランチメニュー)でもいいかなと思っていたんですが、それがありません。軽めのディナーメニューもなし。カルテに載っていたのはアラカルトと、Le menu du Pré なる旗艦メニューだけ。う~~~ん、最初の昼間からヘビーなやつでいくのかな。どげんしよ。

そんなことを悩みながらアラカルトを一通り眺めてみると、ここのカルテには面白い特長があることに気づきました。並んでいるのは玉子、蟹、トマト、ランゴスチン、ムール貝、ズッキーニ、大鮃、鰈、オマール、舌平目、ウズラ、リードヴォー、子羊、牛といった具合。つまり、素材中心。そして、それぞれの素材の下に時々の調理方法や添え物あれこれが付け加えられているのです。これは実にわかりやすく合理的。

そんなリストと旗艦メニューと比べてみると、まぁ食べたいものが旗艦メニューにおおかた入っているし、せっかくの機会だからお薦めメニューで楽しもうと決定。

これも後で気づいたんですが、隣の客がランチメニューがないのをクレームしたらしく、ギャルソンが別紙1枚を持ってきていました。で、隣のカップルが注文したのはお昼のメニュー。消えたわけではなく、お客が要求すれば提示してくるということだったのでしょう。でも私たちには既に遅し。
ただ、隣の客のお皿を横目でちらっと見たところ、ディジョネと旗艦メニューでは内容があまりにも違いすぎ(値段も3倍違うけど)。やっぱりこのクラスのレストランにやってきて美味しいものを食べたいなら、最高のものを頼むのが良さそうですね。日本からの交通費!もコストとするなら、尚更です。

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食べるものが決まったら、次はワイン。
ソムリエが分厚い皮表紙の本をしずしずとテーブルへ持参。いつも思うんですが、その中の数百本の中からいったいどうやって選べというのでしょう。値段もいろいろで、超有名どころは1本数十万円以上するのもありますが、誰がそんなの頼むんでしょうかねぇ(苦笑)。アンリ・ジャイエのクロ・パラントゥなんか、どんな料理に合わせるんでしょうか(飲めない者のヒガミか)。ま、分厚い皮本の提示はお決まりの儀式のようなものだと考えるべきでしょう。

ソムリエは私たちの食べるものを知っています。だから、それに合うワインは何か? お薦めは何か?と尋ねるのが一番です。また、それが彼(彼女)らの仕事。今までの苦い?経験から得た私の知恵。

まともなソムリエなら、とんでもないワインを飲もうなんて思わない限り、べらぼうな値段のワインを薦めることはまずありません。こちらの予算がいくらくらいかなんて野暮なことを聞く無礼なソムリエもこのクラスのレストランで会ったこともありません。というか、相手はこちらを値踏みして、これくらいのワインなら大丈夫だろうというところを狙って提示してきますから、安心(って、値踏みされて安心していいのかどうかはわからないが…)。

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今回ソムリエ氏が薦めてきたのはムルソー。それもシンプルな村名モノ。今日の旗艦メニューなら、これ1本で最後まで通せるので大丈夫だとのお墨付き。まぁお肉がウズラなんで赤はいらないということなんでしょうね、きっと。

「大丈夫?」と云うと、ソムリエは「期待して下さい」と自信満々。ホンマか?

リストをみると某ドメーヌものが1990年代から2007年辺りまでズラ~~っと並んでいます。値段もほぼ横並び。ソムリエはオーフォー、つまり2004が一番とのこと。なぜ2000や2006ではないのかと尋ねても04が良いといって譲りません。そういう頑固さは好きだな、私。そこまで云うんですし、値段もリーズナブルに思えたので(村名モノにしては少し高めだけど)、連れ合いにも了解をとりつけ推薦のものに決定。

Meursault “Le Tessons” Michel BOUZEREAU 2004 …… 127€

過去に飲んだことのない生産者だったので後で経歴や畑を調べたら、ムルソーの小高い丘の上の方にある区画のワインでした。一般にムルソーは魚や野菜料理にはきっちりマッチする美味しいワインなんで大丈夫でしょう。ソムリエが強く薦める訳も飲めばわかるでしょう。

ということで、やっと食べるものとワインが決まりました。この間、半時間超。

食事は既にメニュー選びから始まり、そこでの会話もディナーの1部。ここまで楽しめるようになるまで、それなりの経験と失敗があったなぁと感慨もありますが、その甲斐あっての今というべきかもしれません。ちなみに、今回の訪問日は2010/09/18(さぁ、次はやっと食べるゾ〜の巻)

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