ブリンチキ あるいは ムレンツィ

.opinion .Travel & Taste

ブリンチキはウクライナの郷土料理の1つ。いろいろな具材をクレープのようなシートで巻いて作る春巻きみたいなものといえば、当たらずとも遠からず(かな)。日本に避難してきたウクライナ女性に作り方を習いに夫婦で彦根へ出かけました。

・・・

ロシアのウクライナ侵攻から早や9ヶ月。早く戦争が終わって欲しいと望むところですが、この年末ロシアによるインフラ破壊でウクライナ国民の生活は悲惨な状態になっているとのこと。

ウクライナ関連の用語でややこしいのは、地名や単語でロシア語とウクライナ語があること。首都のキエフはロシア語で、現在はウクライナ語でキーウと云っているのはご存知の通り。ハリコフ⇒ハルキウ、チェルノブイリ⇒チョルノービリなど、新たに変換作業が伴います。今回のロシアの侵略戦争(ロシアはいまだに特別軍事作戦と言い換えている)以降、世界的にウクライナ語の読み方を前面に出していこうという動きとなり、今回紹介するブリンチキもその方向。

ブリンチキというのはロシア語で、ウクライナ語ではムレンツィ。今回の戦争がなければ、私にとって知る機会があったかどうか。見た目は紹介のサイトの通りで、クレープで作った春巻きのようなものです。

いろいろな具材が入ったブリンチキ。皮部分にホウレンソウを練り込んだものもあり

なぜ、そのムレンツィ(ブリンチキ)の作り方を習おうと思ったのか。ウクライナから滋賀県彦根市へ避難してきたイリーナ・ヤボルスカさんやご家族が「できるだけ早く、身寄りのないウクライナ避難民をはじめ、東京や大阪の避難民の方々の雇用を生み出し、前を向く機会を作れるように」との思いで、このムレンツィ(ブリンチキ)をキッチンカーで売るというプロジェクトを開始。プロジェクトを主催するのはFaina、戦火を逃れ、滋賀県彦根市に避難してきた家族とその友人たちです。彼女たちがキッチンカー購入のためのクラウドファンディングを開始したというニュースを5月にインターネットで連れ合いが見つけ、その試みに参加してご縁が出来ました。彼女たちはクラウドファンディングで目標額を達成して7月にキッチンカーを購入し、本格稼働を開始しました。

右からイリーナさんとそのお母さん、そして娘のカテリーナさんと娘婿の菊池さん

今年2月のロシア侵攻以降、ウクライナから日本へ、家族・親戚あるいは何かの伝手で避難してきた人たちは2000人を超えています(11月末時点)。来日後にどうやって暮らしていくのか、本人ならずとも気になるところ。戦争がすぐに終結すれば帰国することもできますが、戦争がどうなるのか見通すことは難しい。当初は援助や支援で何とか暮らすこともできるでしょうが、ずっとそのままという訳にはいかないかもしれない。暮らしていくための手段を何とか見出したいという動きの1つがこのキッチンカープロジェクトでした。

私たち夫婦はクラウドファンディングの「ブリンチキ作り体験x試食会」コースに5月に参加。複数回の体験会の日程の中から選んで、11月に滋賀県彦根市で開催される体験x試食会に参加しました。当日の体験会は日程の関係で私たち夫婦だけの個別講習会。粉を溶いて焼くところから始まり、具材を用意し、最後は春巻きみたいに巻いていくという一連のコース。作った後は、イリーナさん・娘のカテリーナさん・日本人女性スタッフの方と合計5人で試食会。コーヒーや紅茶とともに愉しみました。

イリーナさんに直接指導を受ける筆者。

ムレンツィ(ブリンチキ)の具材は、鶏肉やサーモンやチーズなどいろいろあり。具材によってクレープのような皮部分の味を変え、ホウレン草を練り込んだりもするとのこと。糖質制限な私が云うのも何ですが、具材によって、主食にも副食にも、あるいはデザートにもなるムレンツィ(ブリンチキ)。具材をあれこれ変えることで違いが愉しめ、好みの味わいを作ることもできそうです。出来たての温かいのも美味しいし、冷めても美味しい。冷凍も出来るのでいろいろ使えそうです。

現在ムレンツィ(ブリンチキ)を販売するキッチンカーは彦根を中心に関西各地のイベント会場で出店していますので、どこかで見かけたら是非一度トライしてみて下さい。ちょうど12月10日から25日は京都国立博物館の庭園で夕方から開催される「光と食のアンサンブル」会場にも出向くそうです。ご興味の方は是非どうぞ。