国家は物語で作られる だからウクライナは負けない

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ここ数日の憂鬱を払拭するような論考に出会いました。ユヴァル・ノア・ハラリさん(サイエンス全史)の「プーチンは負けた――ウラジーミル・プーチンがすでにこの戦争に敗れた理由(原題:Why Vladimir Putin has already lost this war)」。2月28日の英国ガーディアン誌に載った寄稿文ですが、この度日本語に翻訳されて河出書房新社のサイトに全文が掲載されました。国家とは何かを改めて考える機会として、是非ご一読下さい。

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圧倒的な軍事力でウクライナを攻撃中のロシア。でも、ウクライナ国土を破壊して何が残るのか。一方、先々週来の経済制裁でロシアのルーブルは急落し、ロシアの株式は紙になってしまい(国内市場は停止、国外は90%以上の暴落)、ロシア経済は崩壊に向けて一直線。

「進撃のプーチン」の目論みは果たして成功するのか。1つの国家として生き残ることを選んだウクライナに対し、国土を破壊し人々を蹂躙しても、民心を掌握できるはずもなし。プーチンが妄想で始めた戦争、終結して欲しいと願う者にとって、それは単なる希望ではないことがユヴァル・ノア・ハラリさんの寄稿文を読んで分かりました。

英国ガーディアン誌の記事はWhy Vladimir Putin has already lost this war

柴田裕之さんの翻訳による「プーチンは負けた――ウラジーミル・プーチンがすでにこの戦争に敗れた理由」はこちら

ハラリさん曰く、Nations are ultimately built on stories. つまり、国家は物語で作られる、抵抗するウクライナ側には「今後何十年も何世代も語り続けることになる物語が、日を追って積み重なっている」、だから、 In the long run, these stories count for more than tanks.(長い目でみると、戦車よりも大きな意味を持つ)とのこと。

そうか、そうなんだと腑に落ちるとともに、そうであって欲しいと思います。是非読んでみて下さい。

1990年で時計が止まってしまったプーチン。ロシア系住民が迫害虐殺されているからと始めた侵略戦争が実はロシア帝国復活を目指した彼の口実だったことが明らかになっても(戦勝予定稿)、ウクライナ市街地の破壊はウクライナの自作自演だ等とウソの情報で自国民を騙そうとする末期的な状況。気に入らない政敵やジャーナリストを牢獄に入れたり暗殺したりとやりたい放題やってきたプーチン、止める者はロシアにいないのか。

ロシア経済の崩壊で市井の人々の生活困窮が不可避となった現在、帝国主義の妄想の権化ともいえるプーチンを排除する動きが出て、一刻も早く戦争が終わることを強く強く願う次第です。