イスラエルのワクチン接種率 60数%
2021/11/03
.opinion health/sickness medical
遅れに遅れた日本でのワクチン接種がやっと先月70%を超えました。一方で、世界で一番最初期から接種を進めてきたイスラエルはいまだ60数%。変だなと思って調べてみると、接種の回数や別の厄介な問題が浮き彫りになってきました。(以下の統計数字は10月末現在)
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いったん収まったかのように見えた新型コロナ、いくらワクチンができたからといっても完全ではなく、おまけに全員が接種しているわけでもありません。未だ感染ウイルスがウヨウヨしているのですから感染する人は出てくるので、経済活動を再開し、マスク解除もしてしまうと感染拡大は当たり前。案の上、欧米や中国での感染拡大が始まりました。イスラエルも同じ。
イスラエルの新型コロナ感染も夏以降また被害が広がり、同国政府はロックダウンを行っています。この動向に対し、一部のメディア等ではワクチンの効果なしと説明していますが、この間違いについては宮坂昌之氏(阪大)が既に詳しく解説していますので、そちらをご参照下さい。
ちなみに、先週末に出たイスラエル政府のデータによると以下の通り(2021/10/21)。ワクチン接種の効果は明らかですが、完全ではない以上、感染は起こり得ることにご注意下さい。
60歳以下で死亡した人の75%はワクチン未接種
60歳以上で死亡した人の57%は未接種
60歳以下で重症化し入院した人の82%は未接種
60歳以上で重症化し入院した人の62%は未接種
9月にコロナ感染や合併症で入院した18歳以下のこども37人のうち、6名は深刻な状況
9月に39人の患者がECMOに繋がれたが、そのうち33人は未接種
さて、ここで問題にするのは、イスラエルのワクチン接種率 60数%という数字です。イスラエルは世界で最も早くからワクチン接種を実施してきたのに日本の接種率72%よりも低いのはいったいなぜなのでしょうか。
答はまず、人口構成の違い。現在ワクチンの接種は12歳以上に対して行っているので、11歳以下の人口が多い国では見かけ上接種率が低くなりますが、イスラエルはまさにこの実例です。
イスラエルの人口構成をみると、若い層が多く高齢者が少ない理想的なピラミッド状をしています。数えてみると11歳以下は約200万人。接種可能な12歳以上の人の約78%は完了していますが、全人口920万人でみると60数%にしかなりません。要するに、イスラエルではワクチン接種が進んでいないのではなく、打てない年齢層の人口が多いということなのです
一方、日本のワクチン接種率は約72%。こちらは11歳以下の人口が約1240万人(10%)で、全人口から差し引くと現在の接種可能人口は約11300万人。この対象人口の80%がワクチン接種しているとすると、全人口当たり約72%になります。ワクチン接種可能者についてみれば、日本もイスラエルも同じ程度の割合といってもよいでしょう。つまり、高齢化が進む日本ならでの理由が接種率の高さに反映されていたのです。
さらに、接種率の違いの裏にはもう1つ大きな違いがあります。日本もイスラエルも接種率がほぼ同じですが、日本では2回接種で完了としているのにイスラエルでは3回接種者を完了とみなしています。現在、その接種もほぼ終わり、4回目の検討準備に入っているようです。つまり、彼の地では接種済みの回数がそもそも違うので、ワクチン接種が遅れているとは言い難い。
もう1つ。彼の地の新聞を読むと、イスラエルでワクチン接種をしない・したくない人は約100万人。これは接種可能人口の約14%。一方、日本で未だワクチン接種をしていない・したくない人は約20%で約1.5倍。接種するかどうかは個人の信条や信念の問題ですが、この違いは国民性なのか。
どこかのデータにワクチン接種に抵抗する国の代表としてウクライナと日本が上位にランクアップされていました。ウクライナは使われるロシア製ワクチンに不安を感じて抵抗しているようですが、日本ではワクチン接種そのものを信頼しない人が多いのかもしれません。慎重な警戒心なのか、科学的合理的な判断ができないのか、危機感が希薄な平和??的な国民性なのか、そこが気になります。
でも、もっと気になるのは、世界的な感染拡大が経済活動の再開が本格化する日本でも同じように起こるのか起こらないのか。起こらないとしたら、欧米で止めてしまったマスク着用の防護措置がワクチン後の世界でもまだ有効であるという証拠になるかもしれません。