直島時間 その2

.Travel & Taste art

直島時間に浸りながら、アートとくに写真についてあれこれ考えてみました。島全体がアート空間なのもこちらの気分を後押ししてくれたのでしょう。まずは面白かった作品をいくつか。

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直島はフェリーの港から始まります。宮ノ浦港に着くとまず目につくのが、波止場の赤いカボチャとモダンなフェリーターミナル。ホンマにここは日本なのかと思わせるような建造物を設計したのはSANNA(妹島・西沢建築ユニット)。ここから異質な時空間へ入るゾという感じ。

直島宮ノ浦港のフェリーターミナル(写真はART SETOUCHIサイトから)

ベネッセはこの島に広大な土地を所有し、そこに美術館と宿泊施設を設けています。もちろん、ベネッセ以外の宿もありますが、ベネッセに泊まると島内を移動するミニバスを使えるし、宿泊者は敷地内を自由に車で動けるなどの利点があります(徒歩や自転車での通過は誰でもOK)。

そのベネッセのホテルは敷地内にミュージアム、オーバル、パーク、ビーチの4つあり、ミュージアム&オーバル、パーク&ビーチそれぞれに美術館が併設されています。

展示されるアートはオープンエンド、つまり屋内だけでなく建屋間の通路、そして屋外の庭園や浜辺などなどにもあります。それ以外にも近くに地中美術館など2つ別の美術館があります。

加えて、隣りの本村地域には「家プロジェクト」と命名された、生活現場にアート空間を混在させる実験的な取り組みもあり、島中に見所満載です。前回紹介した須田さんの「雑草」には驚きましたが、他にも興味深い作品がいろいろ。

まず、柳さんの「ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム1990」(1990年)、画集や雑誌で見たことはありましたが、実物を見るのは多分初めて。

柳幸典「ザ・ワールド・フラッグ・アント・ファーム1990」(1990年)

広い壁面一面に世界中の国旗が額入りで並んでいます。よく観ると中に土を入れておいてアリに巣穴を作らせ、その時間変化を見ていこうというもの。アリの活動で国旗がガタガタになってしまったもの、あるいは既に崩壊状態になったものまであります。アリとは何か、アリと国旗との関係は?等と考え出すと意味深です。

次に気になったのは、ブルース・ナウマンさんの「100生きて死ね」(1984年)。ベネッセミュージアムB1F中央にあるサインボード。LIVEとDIEが後ろに続いた100個の単語のネオンサインですが、予めプログラムされた順番で点滅するため、浮き出た言葉を追っていくのは一興。

5分くらいで一廻りすると聞いたのでしばらく待っていたら出てきたのが下の通り。100という数字は何の象徴なのか、と考えてみても詮無きこと。全部点灯したら綺麗だね〜で一件落着(笑)。

ブルース・ナウマンさんの「one hundred live and die」(1984年)。蛇足ながら、007の「死ぬのは奴らだ」はLive and Let die。

三つ目はジェニファー・バートレットさんの「黄色と黒のボート」(1985年)。絵に登場する小舟を実体化したものが前に置かれています。リアルとヴァーチャル、あるいはリアルとフェイクの融合とでもいえばいいのでしょうか。

ジェニファー・バートレット「黄色と黒のボート」(1985年)

まぁこれだけなら話はオシマイなのですが、彼女はさらにもう一組(二艘)作り、直島の海岸に置いてしまいました。ジェニファーさん自身がミュージアムにやって来て、そこから見えた海岸の景色が絵にそっくりだということで作品を展開したらしい。面白いなぁ。海岸に3つめ(絵画+リアル2)の小舟があるなんて、猪原氏(ベネッセ)から説明を聞かなければ、全く気がつきませんでした。

ミュージアム近くの海岸に黄色と黒の小舟。

おまけ。ミュージアムカフェの隣に出品アーティストの写真が展示されている小部屋あり。そこにあった草間彌生さんの若い頃の姿がまるで山口小夜子さんみたいだったのにびっくり。さて、次回は杉本博司さんの作品について個人的に思うところをつらつら。