統計でウソをつく法

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数式を使わない統計学入門 講談社ブルーバックス120
ダレル・ハフ 著 高木秀玄 訳 1968.7.24

いろいろなデータを読み解く時に必ず必要となる知識があります。この本はその一部を実に明快に紹介しています。


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 私はウソつきが大キライです。
 ウソといっても、たわいのないウソや言い間違い勘違いによる結果的な「ウソ」のことではありません。
統計でウソをつく法 (ブルーバックス)問題なのは、真実を隠すことを画策し、人権を侵害したり、他人を窮地に落とし込むようなウソです。残念ながら、そういうウソを平気でつく人たちは世の中にたくさんいます。
 国や企業なども例外ではありません。彼らは、統計学を使って、もっともらしいウソをよくつきます。ある種の政策誘導のためだったり、製品販売促進のためだったり、いろいろな理由があるのでしょう。必ずしも騙すつもりはないと抗弁するのかもしれません。でも、そのウソの結果、私たちの生活が大きく影響されることが多々ありますから、黙って見過ごすことはできません。私たちはそういうウソとホントとをどう見分けたらいいのでしょうか。この本は、そのための処方箋のいくつかを授けてくれます。

 章の見出しを並べてみましょう。
かたよりはサンプルに付き物、「平均」でだます法、小さい数字はないも同然、大山鳴動 ネズミ一匹、びっくりグラフ、絵グラフの効用、こじつけた数字、因果はめぐる、統計操縦法ときて、最終章は統計のウソを見破る5つのカギ、となっています。
どうです、面白いでしょ? 章のタイトルだけで中味が想像できるようですか? でも、読めばもっと理解は進みます。

 統計は私たちの生活に密接に関係しています。たとえば、今日は例年の平均気温より高めであると云う時、平均という統計が登場します。また、知能や学力を評価する知能指数とか偏差値などの指標に一喜一憂する(した)人は多いのではないでしょうか。ここにも偏差という統計が出てきます。でも、そういう指標の統計的な意味を私たちはどこまで理解しているのでしょうか。もし知らなければ、誤った解釈に陥ったり、何らかの目的で統計を用いる人の餌食になってしまうかもしれません。
 環境問題を考える時も同じこと。たとえば、水質だけで水環境を評価するのはどだい無理な話。いくらデータを並べ立てて難しい数式で説明されても、水質の話だけで、汚染状況の程度を判断するのは早計です。

 上記の例からわかるように、データを統計的に評価したというだけで「科学的」だと判断することが、いかに愚かしいことか。でも、誰かがそういうウソをついても、ほとんどの人は気づかない。ばれないウソはウソではないという「論理」でいけば、嘘つきの跳梁跋扈はとどまるところを知らないでしょう。そんな愚かな社会にならないためにも、この本は実に有用です。
 私の手元にある本の前開きには、’79.6.7(thur)というメモが残っていました。当時の値段で460円、現在は装丁が変わって880円。25年で2倍程度ですが、それにしても息が長い本だなと嬉しく感じます。
 
 最後にひと言。この手の本は両刃の刃的なところがあります。つまり、あなたを騙そうという人もこの手の本を熟読している可能性が高いということ。ご注意下さい。

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