ゴミポリシー

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燃やさないごみ政策 「ゼロ・ウェイスト」ハンドブック
ロビン・マレー著 グリーンピース・ジャパン訳 築地書館  2003.7.20  ¥2800

 ニュージーランド等ではごみを燃やさない。その話を最初に聞いた時、じゃあ、埋め立て地がたくさんあるんだろうな、と考えました。ところが、どっこい。かの国には埋め立て地もほとんどないとのこと。では、いったいどうしているんだろう。この疑問が、私にとってゼロ・ウェイスト運動への関心の出発点でした。(推薦本紹介第三弾です)


 ゼロ・ウェイストとは、そのまま訳せば「ごみゼロ」のこと。そもそもゼロ・ウェイストとはいったい何でしょうか。

ゴミポリシー―燃やさないごみ政策「ゼロ・ウェイスト」ハンドブック
 本では、「有害物質排出ゼロ」、「大気汚染ゼロ」、「無駄資源ゼロ」という3つの主要目標を掲げ、具体例をひきながら、議論を展開しています。
 翻訳者であるグリーンピース・ジャパンの佐藤潤一氏は、ゼロ・ウェイストの基盤として、新規焼却炉の建設中止、既存の焼却炉の段階的廃止、4L(Local/Low cost/Low impact/Low tech)の重視、目標を定めた自治体ごとのゼロ・ウェイスト政策採用、住民のごみ政策への参加をあげています(まえがき)。単なるお題目や空念仏ではなく、具体的な目標・期限を定め、それに向かって取り組んでいく、いわば未来への挑戦というわけです。
 
 日本では、なんでもかんでも燃やしてしまえという焼却中心のごみ政策がとられています。最近では家庭からでるごみも、製造メーカーなどの生産現場から出てくる産業廃棄物もいっしょに燃やしてしまおうという話が活発化してきました。

 一方で、その焼却に不安を感じる人たちに対して、当局は、環境汚染や埋め立て地等での汚染は技術的に解決できると説明しています。本当でしょうか。私たちの健康に本当に影響はないのでしょうか。燃やす政策では、資源を浪費し、いつまでたってもごみを減らせないのではないでしょうか。これから延々と必要となる莫大な費用はいったい誰が支払うのでしょうか・・・。疑問は尽きません。とにかく、焼却中心の政策で廃棄物問題を解決できるとは、私には到底思えません。

 ごみを燃やすと必ず、より有害な物質を作り出します。それを埋め立てると、現在のみならず将来の人々にも毒物を押しつけてしまうことになります。ましてや、焼却灰のリサイクルを進めていくと、「毒物循環型社会」の始まりです。そんな社会になってほしくありません。ゼロウェイスト運動は、そういった欠陥だらけの焼却埋め立て政策に対する対案です。

 この本には、オーストラリアのキャンベラ市やニュージーランドの実例が載っています。それらの先駆的な取り組みは、ごみをなくすことが決して夢物語ではないことを明らかにしています。日本では、今年9月に徳島県上勝町が日本最初の「ゼロ・ウェイスト」宣言を行なったので、ようやく動きが始まったというべきでしょう。
 ごみ問題に取り組む人、私たちの暮らしや健康を考えていこうという人は、是非この本をお読み下さい。この本には、これからの社会にとって大切なヒントが満載です。しっかり読み込んで、内容を消化し、生活を見直すきっかけにして下さい。そして、是非あなたも、ごみをゼロにする世界的な動きの一員になりませんか。そのことを筆者は強く期待します。
 
 ちなみに、この本を翻訳したグリーンピース・ジャパンが「まえがき」につけた解説は秀逸。それだけで本を読む価値があります。そして、なぜ、この本がゼロ・ウェイストを「ごみゼロ」と訳さなかったか。それも「まえがき」で明らかにされています。お薦め。
 (第一稿)