新型コロナ禍の死者数増をどう考えるか

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急激に新型コロナウイルスによる感染者数、重症者数、死亡者数が増えてきました。一方で、例年この時期になると話題になるインフルエンザの患者数はほとんど増えていません。いったいなぜなのか。ここらにも今回の感染症について謎解きのヒントがありそうです。

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新型コロナ禍、もうそろそろ下火になるかと期待していましたが、あにはからんや。先日、「第二ピークを超えなければ終息している途中といってよいでしょう」と書きましたが(11月10日)、年末になって急に感染拡大の様相を呈し、新型コロナ禍の死者数も第一ピークをあっさり超えてきました。

出典は東洋経済オンライン

死亡者数の累計は3219人(12月28日現在)。春の第一ピークでは1日に20~30人程度だったのが、11月下旬には40人50人を超えて60人に迫りそうな雰囲気となっています。その増加傾向は止まる気配を見せず、年末になってGoToトラベルの中断となったのはご存じの通りです。

GoTo云々で感染が広まっているという証拠はありませんが、もう大丈夫、感染は収まりつつあるという誤った理解を世間に広めることで警戒心を薄めるという影響はあったと思われます。おまけに秋からワクチン開発のニュースで期待感も出て皆の警戒心がさらに薄れたのではないでしょうか。

日本が欧米より感染者や死亡者が少ない理由について未だ決定的な根拠は見つかっていませんが、マスクなどの生活慣習の違いは明らか。マスクをせよという命令も罰金もないのに殆ど全員がマスクをしているという状況が欧米との違いの要因のひとつでしょう。おまけに医療サービスの差も大きな要因になっているようです。(変異株で感染力が増したというのはいまだ科学的根拠なし)。

というのも、数日前の電話でLAの友人曰く、ロサンゼルス近郊では死体安置所が溢れ、冷蔵トラックが街中を走り回っているとのこと。まるでSF的な暗い未来のようですが、かの国では医療サービスを受けられない低所得層が沢山いるから(受けるにはお金がかかるから)助かる命も助からないのでしょう。

そういう意味では国民皆保険の日本にいる私たちは幸運です。一方で巷で喧伝される医療崩壊はちょっと奇妙。公的病院とごく一部の民間病院だけに患者を押し付けているのですから、該当病院の医師や看護師がてんてこまいなのは当然。でも、それ以外の多くの病院は新型コロナ診療に扉を閉ざしていてもお咎めなし。大学病院や大病院クラスの中に傍観者的対応のところが結構あるのは制度のゆがみのためでしょうか。感染症の分類を変えるだけで事態は随分改善されるはずなのにそうしないのは厚労省が愚かなのか、それとも別の理由があるのでしょうか。いろいろ疑問は尽きません。

さて、その新型コロナ禍の死亡者数について、いくつかの死亡者数と比べてみましょう。まずインフルエンザ。

例年なら患者数や学級閉鎖や休校が話題になるインフルエンザですが、今年はほとんど感染者が出ていません。例年1シーズンに1000万人位の患者が出ているのに今年度は毎週数十人程度、ほとんど出ていないと云ってもいいくらい。新型コロナの感染者は増えているのに、なぜこんなことになったのでしょうか。

出典はJIJI.COM

身近な医療関係者の話によると、皆がマスクをつけているのでインフルエンザの流行を抑えているのではないかとのこと。さもありなん。ランセット誌の論文ではフランスでの新型コロナウイルスの死亡率はインフルエンザの約3倍という数字を出していました。日本のインフルエンザでの死亡は2018年の1年間で3325人(厚労省発表)。今年度はインフルエンザの非流行でインフルエンザでの死亡が100分の1以下に減少するのでしょうか。

次はヒートショック。これは急激な温度差によって血圧が大きく変動し、失神、心筋梗塞、脳梗塞などを起こすことですが、最悪の場合は死に至ります。この死亡者は年間約5000人程度とのこと。今年1月以降、12/28時点までに新型コロナで亡くなったのが3219人ですから、ヒートショックで亡くなる人の方が多いことになります。

出典はNHK WEB

ヒートショックは、暖かい室内から寒い廊下やトイレに行く時や、浴室での入浴中や入浴後などに発生するとされています。とくに寒い時期に死者数が多いのはそういう事情でしょう。でも、そのヒートショックを防ぐために風呂に入るなとは誰も云わないはず(GoTo批判の奇妙さと比べてみて下さい)。

3つ目は肺炎。日本でこの病気で亡くなる人は最近では年間約9~10万人、このうちウイルスとは関係のない誤嚥性肺炎が約半分なのでそれを差し引くと、年間4万人程度が亡くなっています。この数字と新型コロナウイルスの死亡者3219人(12月28日現在)とを比較してみて下さい。インフルエンザの非流行でインフルエンザ肺炎による死亡が激減した場合、肺炎で亡くなる方の人数は例年よりも減るのでしょうか。数字的には新型コロナによる肺炎と重なってしまうのではないでしょうか。

以上の通り、インフルエンザ、ヒートショック、肺炎(誤嚥性除く)の3つの死亡者数と比べると新型コロナウイルスの死亡者数が多いのか少ないのか、が判断できるのではないでしょうか。

いまだ不明な所が多い新型ウイルスですが、飛沫感染や接触感染が主たる経路ならマスクや手洗いを励行し、密接密集密閉(三密)や集近閉(集まるな、近寄るな、閉めるな)を避けるのが効果的であることもだんだんわかってきました。

ただし、インフルエンザと比較して新型コロナウイルスが厄介なのは、不顕性感染(感染していても症状が出ない)がかなりあること、病初期にインフルエンザのような高熱が必ずしも出ないことでしょう。そういう意味でインフルエンザより厄介なウイルスであることは間違いありません。

まだまだ感染終息には時間がかかりそうなので警戒心を解いてはいけません。でも極端に恐れて経済活動を停止してしまうと次の展開もありません。この年末にご一考下さい。