株価が教える抗体検査の評価

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何が起きているのかわからない・判断できないことが出てきたら、お金の流れを調べよ、というのが私の処世訓。COVID-19に対する医薬品の評価を株式市場がどう見ているか、これは先日記した通り。次は抗体検査について整理してみましょう。

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3月22日、スイス製薬大手のロシュのCEOセベリン・シュワン氏は、市販されている一部の新型コロナウイルス感染の抗体を調べる血液検査キットについて「あてにならない」と酷評しました。そこまで云うかと思っていたら、ロシュ自身が米国FDAの認可取得中で、もろポジショントーク。つまり、今度出す自社製品こそが一番だと云いたかったのでしょう。

既にお伝えした通り、米国ではいくつかの抗体検査が認可されていますし、日本でもクラボウなどが研究所用として販売しています。その中で、どの抗体検査がいいのか気になるところですが、そういう時には、お金がどこに流れているのか、株価で判断するのが1つの方法です。

まず、Chembio Diagnostic Systems(CEMI)。3~5ドル前後だった株価はインサイダーや早耳連中が買い始めた後に10ドルまで騰がり、4月16日に米国で認可されるという報道が流れたら株価は16ドル前後までアップ。その後、10ドル付近まで戻した後12~13ドルをウロウロしています。以前よりも高値ですが、上値超えができないのは、もう十分に騰がったとマーケットは判断したのでしょうか。会社規模が小さい分だけ騰がり下がりが大きいというべきところでしょう。

次に、アボット(Abbott ; ABT)はどうでしょうか。株式市場全体がCOVID-19の影響で落ち込む中、3月中旬の60ドルちょいから4月20日には100ドル手前まで50%以上騰がりました。ところが製品発表したら、株価はだんだんドロップ。これなどは「噂で買ってニュースで売れ」の典型例(苦笑)。ただ、アボット製品に問題がなければ次第にアップしていくことでしょう(私見)。

3番目はロシュ。ロシュは5月3日に米食品医薬品局(FDA)の緊急使用許可(EUA)を取得しました。この会社は米国には上場していませんので、スイス市場での動向を見てみましょう。こちらは先のポジショントークで口先介入をした後、株価は暴落前を上回るほど暴騰し、現在は少しドロップして推移しています。さすが信用と実績と宣伝上手のロシュというべきところでしょうか。

スイス市場におけるロシュの株価の推移

最後はクラボウ。日本の倉敷紡績です。抗体検査キットを販売するとニュースに流れたのは3月12日。その日の終値が一気にアップし、翌13日はストップ高。でも翌週16日はストップ安気味まで大きく落ち込むというド派手な動きを見せました。

おそらくそれまで所有していた株主が突然のニュースで騰がった高値を利益確定したということなのでしょう。面白いのはその後またジワジワと騰がり始め、現在は先のストップ高水準でウロウロしていること。クラボウは紡績企業ですから抗体検査はおまけのようなものですが、現在日本でそれなりの数量が入手できる検査キットはこれだけ、ということに市場が気づき(納得し)、株価が高めに推移しているものと考えられます(注記)。

この製品はもともと中国企業の技術開発によるもの。先日の神戸市立医療センター中央病院の抗体検査にはこの製品が使われていました。ただし、使えるのはIgG抗体キットの方だけ(私見)。また、抗体価を精密測定するのではなく、あくまでも簡易検査です(なお、厚労省はこの検査の保険適用をまだ認めていません)。

以上、市場が抗体検査をどのように評価しているのか探ってみました。おおむね市場はCOVID-19に対する抗体検査の必要性を認識し、今後の動向を好意的に解釈しているとみてよいでしょう。先の医薬品とは様相が少し異なるようです。ただ、テレビや新聞の情報はメーカーや広告代理店等の思惑が絡むので、突然の爆上げ下げに巻き込まれてカモにならないようにご注意下さい。

(注記)こちら倉敷や大原美術館のファン、おまけに自宅には北海道民芸家具いっぱい。だからクラボウは大好きな会社の1つ。そういうこともあり、私は3月中旬に株価がドロップした時に少し買っています。だから上記はポジショントーク込み(念のため)。