イベルメクチンは希望の光になるのか? 

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今日、「モノクローナル抗体」の話をアップしました。とても素晴らしい研究ですが、実用化はかなり先になる見込みですから、とりあえず比較的早く実用化できて安全性の高い薬が望まれます。このような薬の候補の1つがイベルメクチン。ちょっと整理しておきます。

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イベルメクチンについては新聞やテレビでも報道され、既にiPS研究所の山中所長もコメントされているのでご存じの方も多いと思います。重篤な副作用を持つレムデシビルやアビガンなどに比べると安全な医薬品なので、先のモノクローナル抗体治療の前段として有望な候補です。

手元にある「図説 人体寄生虫学(1977年初版、1997年第2版)」のp.132にはアイバメクチンという名前で出ています。

イベルメクチン Ivermectin は抗寄生虫薬として販売されています。それがなぜ、寄生虫とは程遠い新型コロナウイルス感染症に効果があるのか? ホントかな? というのが第一印象。ところがどっこい、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対してなかなか優れた薬のようなのです。

まず、オーストラリアの研究グループは、イベルメクチンには新型コロナウイルスの試験管内(in vitro)での増殖を劇的に阻害する効果がみられた、と発表しました(Antiviral Research誌、2020/3/29受理)。実験室内での研究レベルの話ですが、基礎研究として注目される発表です。

次に米国ユタ州の研究所からの報告では、イベルメクチンを投与した704例と投与しなかった704例における検討(傾向合致症例対照試験、propensity-matched case controlled study)で、明らかな差が出たとのことです(この報告はSSRN誌に2020/4/19に投稿され、査読中の段階です)。

大まかな内容として人工呼吸を要した例では、イベルメクチン投与群は非投与群に比べて死亡者が少なかったとのこと(7.3%対21.3%)。また、全体の死亡率も投与群で明らかに低いという結果でした(1.4%対8.5%)。

この研究は「傾向合致症例対照試験」で行ったため、「ランダム化比較試験」を行ってこの薬の効果をきちんと明らかにする必要があると研究者らは述べていて、まだまだ研究を進める必要がありますが、なかなか期待できる内容です。

ところで、このイベルメクチンという薬は、北里大学の大村智博士とMerck社のWilliam Campbell博士が2015年のノーベル医学生理学賞を共同受賞した薬です。アフリカや中南米で流行していた河川盲目症(オンコセルカ症)では数千万人を救い、世界で1億2千万人いるというリンパ系フィラリア症や糞線虫症、疥癬などにも効果があるとのこと。全世界で数億人に使用されている薬ですが、日本では疥癬の治療をする皮膚科医以外で使ったことがある医師は少ないのが実情でしょうか。

今後、新型コロナウイルス感染症にも効果があることが「ランダム化比較試験」で明らかになれば、さらに多くの人を助けることになります。この薬の良いところは、今まで数億人に投与実績があり、安全性の高さが実証されていることです。治療も錠剤数個を1回内服するだけなので単純明快。入院例とか重症例にだけにしか使用できない薬とか、腎機能障害や肝機能障害などをかなりの頻度で起こすことが分かっている薬より、圧倒的に使い易い。

イベルメクチンのランダム化比較試験をどの国が行っているのか、公開されている情報は今のところ見つけられませんでした。感染研(厚労省)と北里柴三郎博士には歴史的因縁があるとはいえ、北里大学の大村智博士がノーベル賞を受賞された薬でもあるので、是非、日本でもランダム化比較試験を行って早期に結果を発表していただきたい。現時点でも世界へ貢献している医薬品ですが、更なる貢献を実現してほしいものだと強く願う次第です。