エッセンシャルワーカーとCOVIDIOT

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ここで云うエッセンシャルとは生活に必要不可欠な、という意味。つまり、エッセンシャルなワーカー(労働者)は社会生活に欠かせない仕事を担う人たちのこと。業種でいえば、インフラ関係、医療、物流、食品関係など。電気・ガス・水道・交通などのインフラを始めとして、途絶えると大変な仕事ばかりです。

にもかかわらず、今回の新型コロナ感染症の渦中で、医療や物流などに携わる人たちを差別したり苛めたりする人がいるそうな。全くもって恥ずかしい。このような人は日本だけでなく世界中にいるらしく、英語ではCOVIDIOTと云われています。やりきれない話だ。

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まず、COVIDIOT。これは新型コロナウイルスによる感染症(COVID-19)と愚か者(idiot)を合成した単語で、今年になって登場した単語。今回の感染症を甘く考えて外出規制や行動規制を守らなかったり、ガセネタに翻弄されてトイレットペーパーやマスク等を買い漁ったり、医療関係者や物流関係者を苛めたりする人たちのこと。哀しくなってきますね。

自分は感染者に近づきたくないと思っている人は多いでしょう。でも、感染者の治療に日々あたっている人たちを苛めるのはとんでもない話。ましてやその家族にまで排除の手を広げ、医療者の家族は保育園に来るな、学校に来るな、会社に来るな、というのは最低の極み。

誰でも感染するかもしれない、というのが現状なのに、自分だけは感染しない、病院の御世話にはならないとでも思っているのでしょうか。医療者やその家族は排除するけれど、もし自分や家族が感染したら医療者にきちんと診療・看護してもらいたい、と云うのでは筋が通りません。人として最低です。非常時には人の資質がよくわかると誰かが云っていましたが、まさにその通り。私もあなたもCOVIDIOTにならないようにしたいものです。

医療サイドから考えてみて下さい。感染する危険性がある臨床現場で手を尽くし、罹患する恐怖に耐えながら仕事をしているのに、感染者に近いという理由だけで忌避されたり苛められると仕事をする気力がなくなるじゃないですか。

各地の病院では新型コロナウイルスの「院内感染」が問題になり、病棟閉鎖や外来閉鎖に追い込まれている実例もあります。これは医師や看護師の感染防御に必要な医療用特殊マスク(N95マスク)が極めて不足しているのも大きな原因。

個人防護服にしても、中国のような頭から足先まですっぽり覆うジャンプスーツ型の個人防護服とゴーグルを使用している病院は、日本でいったいいくつあるのでしょうか。多くの病院はN95マスクもほとんど無く、個人防御服として長袖エプロン(長袖がなければ、袖無しエプロン)と手袋で感染防御しているのが、哀しいかな日本の現状です(追記)。

このような貧弱な体制の中の医療業務で新型コロナウイルスに罹ってしまった医療関係者は「労働災害」の被害者とも云えます。どこの病院も感染者でいっぱいになったらどうなるのか、国が補償するシステムは構築されるのか、考え出すと問題は山積。

とにかく、感染者の治療に当たっている人たちを忌避したり苛めたりするようなことが日常化するなら、十分な医療が受けられなくなる日が来てしまいます。

医療関係だけではありません。宅配便や運送トラックのドライバーなどの物流関係者も、日々感染の危険と隣り合わせ。バスやタクシーの運転手たちもいっしょ。英国のバス運転手が大勢感染しているとのニュースを読みましたが、日本でもタクシー運転手らに感染被害が出ています。エッセンシャルワーカーが感染が怖いから仕事をやめようという話になったら、この国の物流や交通は止まってしまい、私たちの生活は成り立たなくなります。

ワクチンや特効薬がいつ登場するのか、まだはっきりしたことはわかりません。だから、それまでは我慢の時。その我慢を続けるためにも、私たちの生命線を守ってくれる医療、物流、食品、インフラ関係などの方々には日々の感謝を忘れないよう、強く願う次第です。決してエゴの塊のようなCOVIDIOTにはならないようにお互い注意しておきましょう。

(追記)医療現場でポリエチレン製の長袖エプロンがなくなれば、100円均一のレインコートを使用し、それも無くなれば、ポリエチレン袋をかぶって診療・看護をすることになるという芳しくない未来を予想せざるを得ないのが実状らしい(毎日のように医療関係者の嘆きを聞きます)。