オワコン6 日立のポジショントーク

.opinion 3.11

寒暖アップダウンしながら、だんだん春めいてきました。お変わりございませんか。

知っている人はずっと前から恐れていた、知らない人でもよくわかった原発事故の、東京電力福島第一原発の事故から早や8年。まだ原発事故の後始末が終わらないのに、最近は原発必要論をあれこれ喧伝する向きが増えてきたようで、たとえば経団連会長が先日来国内原発の再稼働に関して積極的な発言を繰り返しています。でも、これこそ「オワコン経団連」の証明。やはり日本の大企業には未来がなさそう(ホンマ)。

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経団連の中西宏明会長は先月2月14日中部電力浜岡発電所(休止中)を訪れた際に、「原子力発電所と原子爆弾が頭の中で結び付いている人に両者は違うと理解させるのは難しい」とし、脱原発団体とは公開討論ができないと発言しました(時事ニュース他たくさん)。

これは変。だって原発と原子爆弾(核爆弾)が結びついているのは歴史からも明らか。原発を動かせば核爆弾の主原料であるプルトニウムが作れることは高校生もわかります。もしこの2つに違いがあるとしたら、運用の目的と方法だけ。「両者は違う」というにはもっと説明が要るでしょうし、いくら抗弁しても結びつき無しというのは難しい。

また、3月になって同氏は先の発言に追加するかのように「エモーショナル(感情的)な反対をする人たちと議論をしても意味がない。絶対いやだという方を説得する力はない」と語ったそうな(ハフポスト他いろいろ)。脱原発が感情的というのは的外れ。個人的意見は誰しも自由ですが、責任ある経団連会長の弁としては「はいそうですか」では終わりません。

ちなみに、日本で原発を推進してきた2大勢力は日立と東芝でした。でも、東芝が米国での失敗でほとんど破綻してしまった現在、残るは日立のみ。

その日立の取締役会長で経団連の会長が中西氏。だとすれば、原発再稼働は自社事業を推進するためのポジショントークだと受け取る方がわかりやすい。とくに、日立は英国で進めてきた原発建設計画が経費高騰を理由に凍結されたことで、国内での原発事業推進の比重が高くなってきたと判断しているのでしょう。

中西氏は「再生エネルギーだけで日本の産業競争力を高めることができればいいが、技術開発が失敗したらどうするのか」とか、「多様なエネルギー源を確保」するために原発は必要だと判断しているようですが、本当でしょうか。未来のエネルギー確保に日立のような会社の出番がないことを恐れているだけではないのか、と私は訝しく思ってしまいます。

日立よりも規模が大きい世界的総合電機企業であるシーメンス(ジーメンス)は、3.11の福島事故の直後に原発から完全に手を引くと表明しました。シーメンスの撤退理由はいろいろですが、予想できない巨額なコストがかかる事業には手が出せないという訳。にもかかわらず、事故を起こした国の企業がいまだに原発に固執するという醜悪さ。

それにしても、この手の解説はダイヤモンドや東洋経済、毎日新聞エコノミストのような経済情報誌と、NHKや大新聞とは随分違います。要するに、この国の大メディアは商売上の柵みから経団連会長発言がポジショントークだとは云えません。政府に忖度するNHKや広告主に気兼ねする大新聞を読んでいるだけでは、私たちは大事な判断を誤ります。まやかされませんように(念のため)。