今年の「世界で影響を与えた科学論文」の第一位は・・・

.Lowcarboあるいは糖質制限 .opinion

年の瀬迫る12月12日、科学論文のインパクトを評価するイギリスの「オルトメトリク」社は今年2017年の「世界で影響を与えた科学論文」を発表しました。紹介記事では日本人の手がけた論文が第三位に入ったことをメインに書かれていますが、興味深かったのは第一位になった論文の方でした。

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その発表で第一位になった論文のタイトルは、”五大陸18カ国における、心血管疾患及び寿命と脂肪や炭水化物の摂食との関連性(PURE)” でした(注)。

この論文は医学雑誌ランセットの11月号で公表されたもので(Vol.390 4 Nov. 2017)、炭水化物を摂りすぎると死亡リスクが上昇する、脂質の摂取は死亡リスクを減らす、あるいは脂肪の摂取は心血管疾患と関係していない等というものです。概要については江部康二医師(高雄病院)が東洋経済オンラインにて概要を解説されているので、そちらを参照下さい。

対象にした患者数は18カ国13万例を超えており、調査期間も10年(中央値で約7年)の長期に渡る調査になっていて、今まで報告されてきた同様の議論よりもより精度の高いものになっているといえます。

科学的調査を無視して糖質制限は危険だとか、日本人は他の国とは違って糖質制限は危険だという医者や学者が未だに後を絶たないのがこの国の哀しい現状です。彼らは本論文のような世界的に注目されるものを読んでいないのでしょうか。読んでいないなら不勉強、読んでいて尚且つ糖質制限は危険だなどと云うならウソツキなわけで、どちらともアカンタレ。

そのトンチンカンのしわ寄せはこの国の糖尿病患者に降りかかります。アカンタレな糖尿病専門医を信じるのも自由ですし、それで心疾患や合併症になるのも自らが招いた結果ですから、なんともいいようがありません。でもそれでいいのですか?

すべての分野で専門家になるのは誰しも到底無理。でも、誰が本当のことを言っているのか、誰がウソツキかを見抜く処世術(情報リテラシー)を身につけなければ、これからの時代生き残れません。今回の第一位論文の発表を知り、そんなことを改めて感じた次第です。

(注)原題は、Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study