FreeStyleリブレ@イル・カント・デル・マッジョ その2
2017/09/14
.Lowcarboあるいは糖質制限 FreeStyleリブレ SMBG
食後血糖値の上昇は糖質量だけでは決まりません。糖質量以外のいろいろな要因が絡んでくるから。当たり前なこの話があまり取り上げられないのはなぜだかわかりませんが、嬉しいのはそれら要因が血糖値のピークを低く抑えてくれることがままあること。「それら要因」とはいったい何か。前回紹介したイル・カント・デル・マッジョのディナーで得られたデータを使って考えてみましょう。
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話を進めるために先に挙げた図をもう一度挙げておきます。糖質量から考えると血糖値がかなり低く抑えられていることが一目瞭然。嬉しいのですが、いったいなぜか。
第一に考えられる理由は食事にかける時間の長さ。糖質1gで血糖値がその3倍量上がるのが短時間に食事をした時の話だとすると、食事時間を長くすると血糖値のピークは低くなります。また、同じ糖質量でも一度に口にするのと、数回に分けてゆっくり食べるのとでは血糖値の上昇は変わります。当然後者が低くなりますが、それは単位時間当たりに消化される糖質量が少なくなるからです。
だいたいフルコースなディナーといえば、イタリアン、フレンチ、中華、あるいは日本の懐石料理でも2時間程度の時間でゆっくり愉しむのが普通です。いらちな人が料理を早く出せとクレームすることもあると聞きますが、それは野暮というもの。お金持ちより時間持ちの方がずっと幸福で口福です(きっぱり)。それはさておき、
一般に時間をかけた食事の利点は一品一品に消化タイムを確保できること。いっぺんに糖質40~50gを摂ってしまうと食後血糖値が200超えになる私にとっては有り難い。また、ゆっくりした食事のおかげで追加インスリンの分泌も期待できるかもしれません(これは個人差大)。
図をご覧下さい。最初のピークはパスタによるものですが、これはパスタの糖質量(20g程度)を反映したものであって、食事全体の糖質量の半分以下だったことは既に触れた通り。
厄介なのはデザート。食べ始めから1時間後にピークは現れませんでした。デザートによるピークらしきものは22時前後で2時間後で、それもかなり低め。このピークずれは時間効果だけでは説明がつきません。
ということで、2番目に考えられるのはアルコール効果。先の図にアルコールを飲み始めた時間にマークをつけておきました。最近は二人でワインボトル一本くらいが一応の目安。今回のワインは19時前から飲み始め、ボトル4分の1は残しました。
血中アルコール濃度がピークになるのは2〜3時間後と考えると、21時くらいまでの私の肝臓ほかもろもろの臓器はアルコール分解にやっきですから血糖値の面倒なんか「あさって来やがれ」でみている暇はありません(グルカゴンの出番も糖新生も舞台袖で待機)。
赤ワインの飲み終わりがデザート直前とすると、そのピークが21時過ぎ。デザートの糖質対応はその前後からだったと考えれば22時辺りのピークが説明できます。またパスタの食事で出てきたピークが少なめだったこともアルコール効果のせいだったかもしれません。この方面の話は既に江部先生のサイトで取り上げられているのでご存じの方も多いでしょうが、私の実例はそれを視覚化したものというわけです(注)。
さらに云えば、食事が夕食だったこと。血糖値はホルモンバランスによって夕方から深夜にかけてゆっくり低下します。上図でもベース値は右肩下がりが窺えますが、結果として血糖値のアップが低めになることを支援したといってもいいでしょう(朝と昼は右肩上がりとなるため逆)。また、レストランを出た後自宅に戻るまでに階段を上り下りしたり歩いたことも血糖値の低下に有利になりました。それらいろいろな要因が重なり合って上図のような血糖値のピークが抑えられたということだろうと私は理解しています。
今回紹介した「糖質量以外のいろいろな要因で血糖値のピークが抑えられる」のは、糖尿病モドキ(境界型)にとっては福音です。だって、アルコールを嗜みながら時間をゆっくりかけて食事をとるのは愉しさを増すことはあっても減じることはありません。
もちろん糖質の絶対量を無視するわけにはいきませんが、食事の時間や食事内容などを考慮することで血糖値の上昇が抑えられるのを知っていれば随分気が楽。このことは既に触れたようにSMBG(自己血糖値試験)でも粗方わかっていたこと。それがFreeStyleリブレのおかげで確信がもてたというわけです。
血糖値のアップダウンは人それぞれ。そういう意味では上記の話が万人共通かどうかは不明です。でも、FreeStyleリブレを活用することでどんな内容の食事ならオッケイなのか、食べ方はどうしたらいいのか、そんなことをチェックできるため食いしん坊にとっては貴重な情報を得ることができるでしょう。そのことだけは請け負います。
(注)アルコール効果を過信してはいけません。多用すると肝臓を痛めますから血糖値どころの話ではなくなります。自分に合った適量を見つけた上でご活用下さい。またインスリン分泌が期待できない人は血糖値のピークがそのままズレるだけなので要注意。
(追記)23時過ぎに現れている小さなピークは入浴による熱ストレス(あるいはリブレ自体の熱異常)によるものだと考えています。