SMBG 5: 温度特性
2017/01/31
先日来血糖値計で低温時におかしなデータが出てくることをお伝えし、その対応策「藤吉郎方式」について提案?してきました。他の人は大丈夫なんだろうかとネットで調べてみると、医療検査を担っている人たちには既に常識的なことのようですが、素人さんにはそうではないみたい。
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自分の血糖値を簡易血糖値計を使って自宅や野外で測るのは簡単です。装置自体、リーズナブルな価格で出回っていますし、採血量もほんの少しですからチクッとする程度の痛みで済みます。最近は糖質制限の広まりもあってか、SMBG(自己血糖測定)をする人が増えてきているはず。
でも血糖値を測ろうというわけですから、もろもろのお約束ゴトがあります。私たち素人つまり医療検査を生業としていない者は測定の簡便性に満足してしまい、背後にある測定原理や守るべき測定条件をつい疎かにしてしまいがちです。私が先日来お伝えしてきたSMBGの低温時の問題もその一例でしょう。
ネットでググると、素人に限らず多くの人がおかしなデータを冬季の体調不良のせいにしたり、珍妙な医学理論を編み出したりしています。かくいう私だって「暁現象」に原因を求めようとしたわけですから一概に笑えません(自戒)。
一方で医療検査に携わるプロたちは早くからSMBGの温度特性について言及してきました。たとえば、「血糖値計 温度特性」などとネットでググってみると、たくさんのレポートや研究報告が出てきます。餅は餅屋というわけでしょうか。その一部を挙げると、
- 松本純子ほか「簡易血糖測 定器 に よる血糖 自己測定 に与 え る温度 の影響 ―寒 冷 環 境 下 で の血 糖 値 測 定 ―」(糖尿病45GD:821〜824,2002)
- 永瀬澄香「SMBGの使用時は温度変化に留意を」(Medical tribune 医学新聞2009/10/08)
- 松本信子ほか「寒冷地における血糖自己測定機器の問題点と測定値に およぼす低温の影響について」(糖尿病 53(12):850〜853,2010)
等が見つかります。ざっと読んでみると、どれも低温時の血糖値測定では正確な値が得られないことを指摘し、このことを知らずに放置してしまうと糖尿病の治療に支障を来すことが懸念されています。
また、「低温時ではいずれの濃度でも室温より有意な高値を示す結果となった」(永瀬氏)とのこと。そうです、本サイトで私が問題にしてきたのがこの点でした。血糖値の測定は20℃くらいの室温環境で計測しなければならないというのは上記の論文やレポートでも指摘されている通り。10℃から40℃が公称温度範囲ですが、10℃〜15℃付近では正確度に問題がありそうです。
・・・・・この手の情報をきちんと調べておけば、昨年末来の低温時のデータの奇妙さに悩まされることもなかったのになぁと思う次第。SMBGに取り組んでいるご同輩な皆様、低温時の血糖値測定にはくれぐれもご用心。
以上、SMBG(自己血糖測定)における低温時の問題について一応一段落。一連の投稿は以下の通りです。なお、血糖値計のエラー表示はメーカー・製品毎に違いますし、測定精度についても機器によって異なります。私が記した議論があなたの機器でそのまま当て嵌まるかどうか、それぞれの機器や環境でご検討下さい(念のため)。