介護退職

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象の墓場 (光文社文庫)今年ももう少しでオシマイ。本の整理をしていたら、楡周平さんの『介護退職』(祥伝社)がまだ読みかけだったのに気付きました。なぜ読了しなかったといえば、現代の、いかにもありそうな展開に躊躇してしまったから。でも、改めて読むと最後の最後でなんとかまとまっていて安心。でも、それは小説であってリアルな世界でははたしてどうなのか。

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今年もそろそろ終わりなので昨日本の整理を開始。まずは机の回りからと、散らかった書籍を整理していたら読みかけのものを多数発見。とりあえず、その中から楡周平さんの『介護退職』を読み進めるとなかなか面白い。とくにラストに救われる気分になりました。

楡周平さんといえば、本サイトでも2度ほど取り上げてきた作家さん。ハードボイルド小説の作家さんとして知られていますが、元はコダック日本法人の社員。写真が銀塩アナログからデジタルへ移行するのを間近で見ていたこともあり、それを小説にしたためた『象の墓場』は銀塩写真の経験の有無にかかわらず写真に興味ある人なら非常に興味深いはずです。


介護退職 (祥伝社文庫)今回紹介する『介護退職』は2011年の作品で(文庫は2014年)、大企業の出世街道をつっ走るエリートサラリーマンが主人公。大仕事をまとめ上げて重役になれるかなれないか、その瀬戸際で、故郷の年老いた親が骨折で動けなくなります。いろいろあって東京にいる主人公の家族が面倒を看ることになるのですが、親は認知症らしきものを発症し、その介護が大変になってきます。そして、そんな中で妻が大病で倒れてしまいます。

当然主人公本人の業務にも支障が出てきて完了間近の大仕事から外されてしまい、失意のうちに退職。でも、仕事がなければお金はいずれ尽きます。生活だけでなく誰が介護費用を出すのでしょうか。この主人公は、家族はどうなるんやろと思っていると、最後の最後で人と人の繋がりというか、ヒトの矜持によって大団円。最後にホロリでした。


親の介護、認知症、こども受験、家族の健康問題等々・・・、現代的な話題をたっぷり盛り込んだ小説に、あぁこれは有りそうだなぁと思うことしきり。以前読むのを止めてしまったのはあまりのミゼラブルさ故だったかも。完読して、(ここでは書きませんが)救いのある最後にホロリときてしまいました。やはりヒトは矜持をもって真摯に生きていれば良いことがある、そういうまとめ方に私は拍手。でも現実はどうなんだろう。