家づくり実践記(2):恐ろしいシロアリ薬剤
1998/10/13
日消費者連盟関西グループ『草の根だより』(98/10月号所収)
最近、ヒ素が世間を賑わせています。言うまでもなく和歌山園部のヒ素カレー事件と保険金詐欺事件ですが、猛毒のヒ素だけでなく、たくさんの有毒物質が当たり前のように住居内で使用されている現実を考えると頭が痛くなります。
ほとんどの木造住宅では、いや鉄骨・鉄筋住宅でも床下に木材を使用する場合には、基礎部分の木材や柱、そして下地材に防腐・防蟻措置を施します。一般に化学薬剤を使うケースが多く、そうしないと木材が腐ったりシロアリに喰べられてしまうと多くの人が心配するからです。使用薬剤は有機リン系(クロルピリホス、フェンチオン等)やピレスロイド系等で、木材や土壌に直接スプレー等でふりかけます。また、薬剤を木材に加圧注入する場合もあり、先の薬剤の他に重金属やヒ素をたっぷり染み込ませます。ヒ素は和歌山だけの話ではないのです。
これらの「措置」、建築関連の法令で定められたものは一切なく、薬剤の種類や使用量についての基準すらありません。したがって、危険な薬剤をふんだんに「措置」しても何の規制もなし。床下に亜ヒ酸をたっぷり使っても何のお咎めもありません。したがって、危険なシロアリ薬剤はイヤだと施主が主張しない限り、『後の祭り』となります。実際に有機リン系薬剤が原因と考えられる被害例が報告されているのは皆さん御存知の通り。「シロアリ薬剤は昔に比べるとだいぶマシになったが、今でも散布したら何日かは現場に近づきたくない、仮病を使ってでもサボりたい」とは、知りあいの大工さんの話。そういう家に住んでいる人の健康が心配です。
シロアリに強く腐りにくい木材を使えば、危険な薬剤は排除できます。(公的ローンを借りる時には必要な)住宅金融公庫の仕様書でも、耐久性があるヒノキやヒバ等の心材/心持材??あれば薬剤処理の必要なしと規定しています。以前はこの規定が明確ではなく、公庫・役所絡みで危険な薬剤使用を推進していました。しかし、度重なる被害例と反農薬東京グループの追及により94年に改訂され現在に至っていますが、今でも建設会社や役所の窓口には「シロアリ薬剤を使わないと建築ができない」という誤った固定観念の人が多いので要注意です。
ところで、シロアリに強い樹種を使ったからといって万事問題なしではありません。床下が湿っけると木材は腐りシロアリも食べやすくなりますから、床下の通風・換気は必須です。既存の住宅でも、木酢液を使ったり、強制的な床下換気、炭の活用などを考える等、危険な化学物質を避ける方法がありますので、是非御検討下さい。
さて、私自身の話。今年の春、大手ハウスメーカーにシロアリ薬剤や薬剤処理済み木材を使わないで家をつくりたいと希望を伝えたら、(私が調べた限り)可能な会社は皆無。シロアリ薬剤をふんだんに使うことを「売り」にしていたり、シロアリ薬剤を使わないと言いつつ既に薬剤が加圧注入された木材を使っていたり、鉄骨構造なのに床下の下地材に薬剤注入木材を使っていたり、シロアリ薬剤不使用では完成後の保証ができないと言ってきた会社もありました。シロアリ薬剤なしで家をつくろうとしたら、なかなか大変だと実感。でも、おかげで安全な家をつくれる工務店を真剣に探すきっかけになったのは感謝すべきかもしれません。自宅設計では薬剤処理の木材一切なしでなんとか施工できそうです。
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1)土台の木材は何か。危険な防腐・防蟻処理木材は使われていないか?
2)柱や筋交い、下地板等は有害な薬品で処理していないか?
3)床下や水回り個所の通風換気は十分確保できるか?
4)近隣で新築建設がなされる時にはシロアリ薬剤の使用に要注意。
(1998.10.13)