運不運

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先日取り上げたジョコビッチさん、圧倒的な強さで今年の全豪オープンを制覇しました。そんなこともあり、今朝ネットにて「ジョコビッチの強さ」で検索。奥さんや家族がいいから彼は強い等という微笑ましい理由を挙げている人も多かったのですが、食事内容を話題にしている人もそれなりにいらっしゃいました。ただ、食事が妥当だからといって世界一になれるほど簡単なもんじゃないでしょう。

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運とつきあう 幸せとお金を呼び込む13の方法私たちは「勝った者は強い」とつい思いがちです。さらに「勝ちには何か秘密が隠されている」等という風にも考えが発展します。でも、本当にそうなのでしょうか。「強い者が勝つ」のはわかりますが、必ずしもそうだとは限らない。だいいち相手の調子が悪かったのかもしれませんし、運が良かっただけかもしれません。

一方で勝った本人が運の強さに言及することは少ないのではないでしょうか。たとえば成功した会社の経営者が、いかに自分の判断が正しかったか優秀だったかを誇示するかのような発言をしたり自伝を書いたりしても運が良かったからと謙遜する人はほとんどいません。

相場もいっしょ。大儲けした人物が、自分がいかに賢明か、自分が採った方法がどういう風に優れているのかを自慢するのをよく見かけますが、それは結果論でたまたま運が良かったからではないでしょうか(注)。謙虚ならば、「勝ったのは運が良かったら。負けたのは自分の力が及ばなかったから」と考えるのが筋で、「勝ったのは自分の力だ」等と天狗になって財産や地位を失う例がたくさんあるような気がします。


『運とつきあう(幸せとお金を呼び込む13の方法)』を書いたマックス・ギュンターさんによると、運を否定するのはキリスト教的な「勤労倫理」に根ざした考え方であり、頑張れば何とか道が切り開けると考える傾向があるとのこと。そう考えれば努力は苦になりません。でも、世の中は冷酷。いくら努力しても報われないことが多いのは皆さんご存じの通り。それはホンマに努力が足りなかったせいなのでしょうか。違うでしょう。

私思うに、「勤労倫理」というのは私たちを働き蜂あるいは労働者階級に固定化させるための便法であり、いわば支配層のロジックの1つ。先のギュンターさんは、ロックフェラーやワトソン(IBM)やゲッティなどが勤労論理を教え諭してきたのは、彼らがたまたま得た類い稀れな幸運を覆い隠しているだけだと厳しく指摘しています。その通りだと私も同感します。

要するに、物事の成否は運不運に大きく関係するということ。大切なことは運の存在を認識し、運を味方につけるような行動をとることだ、というのがギュンターさんの主張で、そのための方策を著書で提示しています。どれも納得いくもので参考になります。

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さて、ジョコビッチさんに話を戻しましょう。
彼のグルテンフリー&ローカーボ食は既に触れた通り。そのことが強さの根幹であるとご本人自身が解説しているのですが、それだけが常勝の原因であると考えるのは早計です。

彼の食事方法は強さの必要条件ですが十分条件ではありません。敢えて云えば、体調を整え、強靱な体と持久力をキープすることで運を呼び込む基盤を彼が確保しているのが強みというべきところでしょう。先のジョコビッチ本とギュンター本の2つを合わせるとそういう結論が導けます。ギュンターさんの『運とつきあう(幸せとお金を呼び込む13の方法)』はお薦めです。

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(注)数少ない例外は、世界1,2を争う大金持ちのウォーレン・バフェットさん。大金持ちになれた理由は何かと問われた時の答は「運が良かったから」。どこかの本にそう載っていました。その通り。これを単なる謙遜だと解釈するようでは、明日はどうなるかわからぬ相場の本質にいつまで経っても迫れないでしょう。