日本の巨大企業は税金を払っていない

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税金を払わない巨大企業 (文春新書)日本の巨大企業は税金を払っていない。そう聞くとホンマかな〜と思う人は多いかもしれません。でも、「ほとんど払っていない」と云っても外れていません。そのことを丁寧に解説したのが富岡幸雄さん、元国税庁のお役人。『税金を払わない巨大企業』は日本の税制がいかに大企業寄りに運用されているか、それを暴いた名著です。

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富岡さんの指摘の中で、もっとも興味を惹くのは大企業が法人税をほとんど払っていないということ。表向きの法人税率というのはたしかに有りますが、実際にはそれが適用されておらず、日本を代表するような巨大企業の法人税は利益に対して少なすぎるという指摘です。理由は簡単。法人税にはいろいろな抜け穴があるからです。

本書には具体的に大企業の支払った税金の額が示してあるので一目瞭然。2013年度でいえば(27ページ 「実効税負担率の低い大企業35社」のリストから)、

企業名 税引前純利益 実際に払った法人税等 実効税負担率
1 三井住友フィナンシャルグループ 1480億円 300万円 0.002%
2 ソフトバンク 789億円 500万円 0.006%
3 みずほフィナンシャルグループ 2419億円 2.3億円 0.09%
4 三菱UFJフィナンシャルグループ 1887億円 5.8億円 0.31%
7 ファーストリテイリング 757億円 52億円 6.92%

 

 

大メディアは日本の法人税が高すぎると声高に言いますが、上記リストからわかるように、大企業は売上や利益の割には税金を払っていない。一方で、中小企業や零細企業がしっかり法人税を取られているのにもかかわらず。このギャップはいったい何なのか?(注)

yamab1504個人的にびっくりしたのは企業が手持ち株式の配当金に税金を一切払っていないこと。ご存じのように、私たち個人が株を所有し、その配当を受け取る時には国税と地方税合わせて20%の所得税がかかります(現在これに復興なんとか税が加算)。ところが、ある会社が別会社の株を持ち、その配当金を受け取っても所得として計上しなくて良いのです。つまり、企業は20%の配当課税を免れているわけ。なんで?

税制上では「受取配当益金不算入制度」といい、企業が他の会社の株式を持っている場合、その企業間配当は無視してもいい、というのが日本の税制なんだそうな。お金のある大企業は他の企業の株式をたくさん保有していますが、それは企業支配の一形態ですから問題だという指摘もあるのに、お金の問題でこんな優遇措置があるとは、これ何ですの?!(怒)。

驚くなかれ。その金額たるや売上利益に相当する位のデカさです。たとえば、2008年度から2013年度の6期分でみると、三菱東京UFJ銀行は税引き前利益が3.2兆円ですが、そのうちの配当収入は2.4兆円。トヨタ自動車は税引き前利益2.5兆円のうち配当収入が2.3兆円。第一生命は3200億円の利益に対し、配当収入は2.1兆円などなど。(データは本書59ページより)

shukiku1505この金額のデカさは異様です。要するに、大企業は本業よりも企業支配で利益を上げているようなもの。日々メディアで流れる企業の売上が〜とか業績がどうのこうの等という話が空々しい。

先の法人税の支払い免除や配当の所得控除など大企業優遇税制をちょっといじれば、庶民に対する消費税増税など一切要りません。著者の富岡さんもそう指摘しています。でも、そんな話を大メディアで解説する者はいません。だって、そんな話をすれば大企業がスポンサーになっているTVや新聞では潰されてしまうでしょう。一方で消費税増税をしないと日本はたち行かなくなると云う学者や評論家はすべて大企業の手先か子分と考えておけば間違いないでしょう。私はそう考えます。

とにもかくにも、この国の税制は大企業に阿る(おもねる)ものになっている。なのに字面の法人税率だけを他国と比較して支払いをさらに減らそうとしているのが大企業であり、それを支援しているのが大メディア。どこが民主的な近代国家やねんと悪態つきたくなりますね。皆さんは大企業擁護の報道に騙されないようにして下さい。そういう意味で、富岡さんの『税金を払わない巨大企業』は必読です。

(注)この本、アマゾンでは匿名諸氏の反論で評価が低くなっています。たとえば、ソフトバンク等は小会社が税金をちゃんと払っており、グループとしては税金を払っている、そんなことも知らずにおかしなことを書くな…というものなど。でも、その指摘について著者は、税制と会計制度を取り違えた誤りを指摘していました(週刊金曜日2015年4月3日 1034号)。まぁ指摘の是非は横に置くとしても、日本の大企業が税金を払っていないという「事実」は揺らぎようもなく、それを暴露した本書に難癖をつける人たちは、私思うに大企業優遇税制を改正されては困る者たちではないでしょうか。