料理も政治もいっしょ

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presChef昨日書いたように「8月の家族たち」の後味が良くなかったので、同じ日の晩にツタヤで借りた「大統領の料理人」を観ました。味は味でもこっちは美味しい料理がいろいろ登場し、台詞だけでも涎が出そうな感じ。先の映画の後味を打ち消すようで正解でした。

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「大統領の料理人」の原題は「Les Saveurs du Palais」。宮廷の味わいとでも訳せばいいのでしょうか。フランスのペリゴール地方の料理人だった主人公が、あのJ・ロブションの推薦でエリゼ宮の大統領専属シェフに抜擢されるところから話が始まります。でも、架空の話ではありません。フランスのミッテラン大統領の宮廷料理人を勤めた女性シェフの実話です。

料理や星つきレストランを舞台にした映画は数々あれど、登場する料理が美味しそうに見えるのはなかなかありません。でも、この映画はピカイチ級(注)。サーモンのファルシなんか涎が出そうな位(私だけだったらご免)。

tannbo1405また、大統領の家族や親族のお食事会のためのメニュー会議が面白い。大統領出身のロワール地方の料理で構成していくのですが、素朴な味わいを重視しながらロワールの銘醸ワインで合わせていく話が実にテンポ良くて、スタッフの食通ぶりがそのまま窺えます。そのシーンで、クーレドセランと聞いて思わず唾を飲み込み、パブロフの犬状態。映画の術中に見事に嵌まってしまいました。

そのエリゼ宮ですが、メイン厨房は男だけの官僚的な職場で、当時、形式張った派手な料理を出していたようです。大統領はそんな料理に辟易したらしく、素朴な味わいを大事にする主人公を専属にするわけです。でも、並み居るシェフたちは当然面白くありませんから、非協力的。会計担当の官僚連中も苦虫状態です。

そんな理不尽なエリゼ宮の官僚主義と戦いながら、主人公は大統領のための料理に取り組んでいきます。それを知った大統領が深夜厨房に下りてきて、「私も同じ」とぼそっとつぶやく台詞が含蓄深い。

タイトルの「Les Saveurs du Palais」、宮廷の味わいとはダブルミーニング。つまり、美味しい宮廷料理という意味だけではなく、宮廷料理をめぐる主人公の楽しくも苦い経験や印象をそのまま伝えているというわけでしょう。

美味しい雰囲気満載で観る料理として愉しめます。食通の人には文句なくマル。お薦め。

あ、1つ忘れていました。映画の中で大統領の健康管理を行う栄養士(栄養学者)がプレゼを分からず、料理にソースを使うなと主人公に命令するシーンが出てきます。ソースといえばバターや生クリームいっぱいという先入観に縛られているという話なんですが、フランスの栄養士さんにも困った人がいるみたい〜と夫婦で言い合った次第です。

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ちなみに、実在の主人公にインタビューした記事はこちらです。

(注)他にも料理が美味しく見える映画といえば、バベットの晩餐会でしょうか。そういえば、あちらも女性シェフが主人公。