消えていくガソリンスタンド その2

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haioku1312b11日に「消えていくガソリンスタンド」を書いた後、ネットをググってみると、数年前から似たような話がテレビや新聞でも何度か取り上げられ、話題になっていることがわかりました。
その時々での分析ははたして妥当だったのかどうか、本当のところスタンドが消えていく理由は何なのか。そこにはエコカー云々以前に法制や規制の問題があり、業界の過当競争や国際的な原油高、そして将来の見通しが全く不明という、どこにもありそうな厄介な問題がのしかかっているようです。

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試しに、Googleで「消えていくガソリンスタンド」を検索してみましょう。2013年12月16日現在私が書いたものが上位に位置していますが、それは検索アルゴリズムが投稿の鮮度を問題にするための結果。ここ数年で一番読まれたものは何かという点を反映していないので要注意です。

他に何が示されているかといえば、この話題で一番古そうなのが朝日新聞の記事。2008年11月に既に取り上げられていました。内容は、21世紀に入ってからの原油高や暫定税率一時期限切れの影響で赤字に苦しむガソリンスタンドが出てきた、廃業で地域生活に大きな影響が及んでいる…というものです。

朝日新聞 町のガソリンスタンド消滅の危機 過去最悪の勢いで閉鎖 2008年11月24日 

2011年のNHK放送もガソリンスタンドの激減を同じ枠組みで捉え、過疎化や高齢社会との関係で問題にしています。

NHK クローズアップ現代 ガソリンスタンドが消える 2011年2月10日 

さらに2011年2月には消防法が改定され、タンク設置から40年以上経過した給油所の地下タンクについては2013年1月末までにタンクの交換や油漏れ防止措置などの対策が義務付けられました。それがガソリンスタンドの廃業に拍車をかけたというわけです。

読売新聞 2013年1月21日  給油所が消える日

MSN産経新聞2013年10月23日 ガソリンスタンド4割減 増え続ける給油所過疎地 九州

以上のように、ガソリンスタンドの廃業については既にいろいろと報じられ、その原因についても時々であれこれ云われてきたようです。でも、今現在で振り返ってみると特定原因が1つというよりも経済不況や原油高に伴う理由を基盤にした複合的な理由によってもたらされた、といっても良いのではないでしょうか。

今一度ガソリンスタンドの数の経年変化を見てみましょう。エネ庁のデータからグラフ化したものが下のものです。これを見るとわかるように、1994年、1995年に約6万箇所とピークを打ってから次第に減っています。

給油所の数は前年の給油所の数プラス新設数マイナス廃業数。どんどん減ってきたのは新設数よりも廃止される数が多いからです。

SSdata13

それにしても、ピークの3分の1がなくなったのは自然消滅とはとても言い難い。あれこれ調べてみると、この理由として挙げられているのが特石法の改定で、新規参入が緩和されたことで業界の過当競争が激化し、資金力や顧客基盤の弱いスタンドが淘汰されていくことになったようです。

つまり、2011年の消防法の改正でガソリンスタンドが減ったというのではなく、規制緩和に伴う過当競争でもともと減り続けてきていたところに消防法改定で余計に困窮してしまったということ。でも、施設の安全確保は基本条件なので、それぞれの店舗がタンクや給油設備の更新費用を考えていなかったとしたら、それは完全に経営ミス。廃業を法改正のせいにするのは責任転嫁というものでしょう。

燃費の良い車が増えてきたためガソリンの需要が減ってきた、原油高で儲けが吹っ飛んでしまう、老朽化したタンクや設備更新にお金がかかる…、これでは儲かるどころか、その反対な話ばかり。向かい風な話ばかりでは将来への展望も何もありません。おまけに時代は従来型オイルからシェールガス、シェールオイルへ移行し始めましたから、状況的には余計に厄介です。

廃業するガソリンスタンドにはスタンド個々の理由もあるのでしょうが、その近隣の者にとってはガソリンを入れようとしても近くにスタンドがないという状況に陥ります。車が走らないだけでありません。灯油のサービスもなくなるため冬場の暖にも窮するということになります。既にそのことは起きていて、「灯油難民」という言葉まで登場しているくらいです。

ガソリンスタンドの廃業問題もまた、「試合のルールが変わってしまった」話の1つなのです。ライフライン確保という名目で税金を注ぎ込むのが良いのか悪いのか、費用問題1つとっても厄介ですね〜。

haioku1312